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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について
403/635

◆403◆

 名実共に今や中学生の部において並ぶ者なき最強王者パティに対し、他の選手達はそれでも諦める事なく果敢に戦いを挑んでいる。


 特にレングストン家の選手達は、アウフヴェルツ社の技術協力の下、VRまで用いてこの強敵を倒す為のデータ分析と特訓に励んで来た事もあり


「狙うはパティの首一つ!」


 と、中学生女子にしてはやや物騒な気炎を揚げていた。


「でも組み合わせのクジ運もあるから、パティだけ狙うのは効率悪いだろうねー」


 黒いトンガリ帽子に黒ローブ姿というお馴染みの魔女コスプレをしたコルティナが、観客席でマンホールの蓋の如き巨大などら焼きをこれ見よがしに食べながら、周りにいるララメンテ家応援団の仲間達にそんな感想を述べた。


「いや、他の選手に対しても、相応に対策は立ててるでしょ、流石に」

「レングストン家特有の熱い気合いの入れ方だよね、あれ。ウチだったら『レングストン家がパティを倒した後で、漁夫の利を狙おう』とかかな」

「そこまで露骨に他力本願を表明したりしない。ただ、心の中で思うだけ」


 いついかなる時も心の余裕を忘れない、もしくは熱血スポ根のノリと縁遠いララメンテ家気質の仲間達。


「ウチだって、パティを倒せば『高級ホテルの極上スイーツ食べ放題』だからねー。打倒パティのモチベーションはレングストン家に勝るとも劣らないはずだよー」


「食べ物で釣るのもどうかな、って気がしてきたわ。それより、あんたが今食べてる巨大どら焼き、妙に美味しそうなんだけど」 


「美味しいよー。同じどら焼きで普通サイズのを用意してあるから、皆一個ずつ取って食べてねー」


 コルティナの計らいで、一つ一つビニール包装されているどら焼きの入った紙袋が、応援団の間で回される。「食べ物で釣るのもどうかな」などと疑問を呈しつつ、つい食べ物に釣られてしまう仲間達。


「あんまり食べると、反省会で何も食べられなくなるから注意してねー」


「いや、そんな巨大などら焼きを食べてる人に言われても」


「うふふ、甘い物は別腹だよー?」


「さっきの言葉と矛盾してるんだけど。それに反省会で食べるのも甘い物がメインだから同じ腹でしょうに」


「お世話になってるアトレビド社の新製品だからねー。こうやってさりげなく宣伝しておかないとー」


「さりげなくない、さりげなくない。思いっきり目立ってる」


「ウチもアトレビド社に協力してもらって、何か剣術に活かせないかなー。試合前に食べると強くなるお菓子とかー」


「ドーピングの匂いしかしないわ」


 一方、皆でどら焼きを食べながらしょうもない話をしている応援団を見て、ララメンテ家の選手達は、


「何か、あの人達を見てたら、無性にどら焼きが食べたくなって来た」


 レングストン家の気合いとは真逆の方向に感情のベクトルが向いてしまっていた。


 正に、この応援団にしてこの選手あり。

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