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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について
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◆401◆

 エディリア剣術御三家による一連の全国大会のトップを飾る、マントノン家の小学生の部が昨年同様、首都エディロのとある市民体育館でひっそりほのぼのと開催され、


「しかし、二年前までの盛況が嘘の様だなあ」


 主に出場選手の身内で七割方埋まっている会場の観客席からは、散発的な声援に混じって、時折そんな声も聞かれた。


「二年後は、中学生の部もこんな風にガラガラになるのかねえ」


 目の前の小学生の部の光景はそのまま、二年後にパティ・マントノンが抜けた後の中学生の部の未来予想図の様にも思われた。


「で、多分五年後は高校生の部もこうなるんだぜ。その分、一般の部が大入り満員になるんだろうが」

「五年後って言うと、コルティナとエーレは二十三歳、ミノンは二十一歳、パティは十九歳か。もう『美少女剣士』っていう歳でもねえな」

「ついこの前まで小学生だと思ってたら、もう皆そんな大きくなっちまうとはねえ。俺達も歳を取る訳だ」

「待て。五年後はともかく、今はまだ中高生だからな」


 未来予想図につられて時間の感覚がおかしくなる、気が早い観客達。


「でも、どうなのかしらねえ。『美少女』って肩書きがなくなっても、あれだけの人気を保っていられるのかしら」

「『美少女』タレントって、少し歳を取って『少女』じゃなくなると、どうしても輝きが褪せるものね」

「そこそこ奇麗な子でも、一番輝いていた頃のイメージと比較されて、『劣化した』なんて失礼な事言われちゃうから」


 我が子の応援に来た一部の母親達は、失礼な事を言いたい放題である。彼女達にもかつて輝いていた少女時代があったのかどうか、現在の風貌から伺い知る事は難しいが。


「交代の時間だぜ。休憩して来いよ」

「ああ、でも、ここに立ってても休憩してるのと変わらねえな。平和なもんだ」


 一方、会場の入口付近では、警備員の制服を着た「全国格闘大会推進委員会(仮)」のメンバー二人が穏やかな日差しの下、そんな会話を交わしていた。


「いずれ、俺達もこういう所で全国大会をやれるといいなあ」


「やるだけだったら、今すぐにでも出来るんじゃないか? アマチュアのスポーツ大会の場合、ここは使用料も割と安くしてくれるみたいだぞ」


「けど、どんなに立派な会場を押さえても、観客が来なかったら寂しいぜ」


「俺達の場合、選手達の身内が応援に来るにしても、小学校の体育館で十分な規模だよな。ここはまだ俺達には大き過ぎる」


 二人は会場を見上げてため息をつき、


「ま、小学校の小さな体育館も悪くねえさ。警備員が少なくて済む」


「準備も後片付けも楽だしな」


 冗談を言って笑い合った後、警備を交代した。


 この吞気な二人も、続いて中学生の部の大会の警備員のバイトに参加し、その規模の大きさと観客の多さに度肝を抜かれる事になるのだが、今はまだそれを知る由もない。

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