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散歩中やたらあちこちにふわふわと寄り道したがる落ち着きのない飼い犬も最後にはきちんと家に帰る様に、コルティナもその後ふわふわと話を脱線させ続けながらも、合間合間にマントノン家とレングストン家の最近の動向や、去年の大会で活躍した両家の主要な選手達のデータについて、
「もちろん、これは去年のデータであって、今年も通用するかどうかは定かでないけどねー」
と念を押した上で、その傾向と対策を分かり易く皆にきちんと解説していった。
「マントノン家とレングストン家の大会で収集した新しいデータで修正して、最後の本土防衛戦にかけるいつものパターンね」
選手達の一人がそう言うと、コルティナはふわふわした笑顔で、
「別にウチの選手がその二大会で優勝してしまっても構わんのだよー?」
とてつもない難題を、さも何でもない事の様にふわふわと言い放ち、
「死亡フラグ立てるのはやめて」
即座にツッコミを入れられる。
「でも、組み合わせを決定するクジ運にもよるし、諦めないで頑張ってねー」
「いや、クジ運だけじゃ試合に勝てないでしょうに」
「そうだねー。剣術大会を勝ち進むのに重要なのはー、『知力』と『体力』と『時の運』だしー」
「どこのクイズ番組だ」
「優勝賞品はいつもの様に、高級ホテルの極上スイーツ食べ放題です。回答者の皆さんは頑張ってくださいねー」
「何か、実際にそういう賞品を出すクイズ番組がありそうな気がしてきた」
「ではー、第一問」
「え、本当にやるの?」
「『エディリアでも人気のスイーツ「ティラミス」は、元々「稲妻」を意味する言葉である』、○か×か?」
「二択?」
「○と思う人は窓際へ、×と思う人は廊下側へ移動してください。制限時間は一分で」
ポン、と手を叩いて促すコルティナに、ノリのいいララメンテ家の選手達は右往左往しながら、
「○だよね? そんな事を聞いた覚えがあるんだけど」
「いや、『稲妻』は他のお菓子だったと思う。ティラミスは……何だったかなぁ……」
「何かの草の名前じゃなかった?」
「それマシュマロ」
結局○と×でほぼ半々に分かれ、固唾を呑んでコルティナの言葉を待つ。
コルティナはそんな彼女達の真剣な顔をぐるりと見回してから、一呼吸おいて、
「じゃ、そろそろ対策会議の続きに戻るよー」
お約束のボケをかまし、
「その前に今の答えを言えっ!」
皆から一斉にツッコミを食らうのだった。
ちなみに正解は×だが、もちろん剣術とは何の関係もない。