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美少女剣士による四連CMで、一人だけ本人の意思に反して幼女扱いを受け、ご機嫌斜めのエーレの元へ、
「でも、可愛かったからいいでしょ? 結果オーライだよー」
全ての元凶であるコルティナが、まったく悪びれずにふわふわと遊びにやって来た。
「よくないわよ! あなたが余計な事しなければ、私も冒険活劇風のCMだったのに!」
その反省の色のなさに、イラッとするエーレ。
「冒険活劇風だと、幼女の姿の妖精役? それは私も見たかったなー」
「誰が幼女だ! 剣士役よ!」
「うん、ちびっこ剣士もいいねー」
「『ちびっこ』は余計!」
「まーまー、またアトレビドからもらったお菓子を一杯持って来てあげたから、食べながら話そうよー」
「私はお菓子に懐柔されるちびっこじゃない!」
エーレの抗議をふわふわと受け流しつつ、レングストン家の屋敷の応接間までやって来たコルティナは、持参した段ボール箱の中から、封筒サイズのカラフルな袋に入った菓子を取り出して見せ、
「特にこれなんかお勧めー、サムライの国の子供達に大人気のロングセラー商品でー、美味しいのはもちろん、楽しく遊べるお菓子だよー」
「楽しく遊べるお菓子?」
エーレの興味を惹く事に成功する。
「このプラスチックのトレイのくぼみにー、粉と水を入れてこのプラスチックのスプーンでよく練るとー、あら不思議、白い粉が段々青くなってふくらんできまーす」
実演販売員よろしく、慣れた手つきで袋を開け、すぐにお菓子作りの作業に取り掛かるコルティナ。
「あ、本当に青くなった」
「で、もう一つの粉を加えて練るとー」
「今度は赤紫になるのね」
練れば練るほど色が変わっていく様子に、さっきまで抗議していた事も忘れてつい見入るエーレ。
「で、この色の付いたクリームをスプーンですくって、キャンディチップを付けて食べるのー。お一つどうぞー」
そんなエーレにコルティナがスプーンを手渡し、エーレはそれを一口食べ、
「うん、結構美味しいじゃない」
「そこは、『うまいっ!』と叫ぶのがお約束だよー」
「何よそれ?」
「今度、私が魔女の格好でCMに出てBGM付きで実演するからねー。テーレッテレー♪」
「よく分からないけど、あなたも大変ね。次から次へと」
それからしばらくの間、エーレはこのお菓子が気に入ったと見え、子供の様に夢中になってカラフルなクリームを練る事に没頭していた。
その姿を見る限り、周囲から幼女扱いされるのも無理はない。