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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十三章◆◆ 魔女と幼女と姫と騎士の四連CMについて
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◆392◆

「『子供のやる事だから』と自由気ままが許される時期が過ぎ、大人になってしまえば、どうしても各々の立場というものに縛られる様になります」


 まだ十八歳という若さにも拘わらず、既に押しも押されぬマントノン家の当主として、そんじょそこらの大人より貫録が十二分に備わっているシェルシェが説明を続ける。


「お前などは十三歳でマントノン家の当主を継いだ時から、その立場に縛られている様なものだしな」


 改めてこの孫娘の不自由な立場に同情する、前々当主にして祖父のクぺ。 


「ふふふ、私は当主という立場上、他家どころか自家の公式大会にさえ、おいそれと出場出来ない身ですからね。その点、エーレ、コルティナ、ミノン、パティ、といった今をときめく『美少女剣士』達は、『少女』であるが故に、堂々と他家の大会に乗り込んで暴れる事も許されているのです」


「『少女』であるが故に、か。では、来年一般の部に移行すると、エーレとコルティナはどうなる?」


「エーレの見た目がまだ当分は『少女』で通るであろう事はさておき、徐々に他家の大会で暴れる事にも風当たりが強くなるでしょう。同年代の子供同士で競われる大会に比べて、その流派の師範クラスが普通に出場する大会では、外部から乗りこんで暴れる事の意味合いが変わって来ますから」


「確かにある意味、道場破りと構図が似ているかもしれん」


「もっとも主催者側も、スター選手の話題性がもたらす莫大な興行収入と引き換えに、最初の内はある程度容認してくれるかもしれません。ですがそれも長く続くにつれ、自流派のメンツに大きく関わる様になれば、どうしても軋轢は避けられなくなります」


「ふむ。てっきり、スター選手を一目見ようと盛り上がる大会が、そのまま一般の部へ場を移すだけ、と考えていたが」


「そして、その辺りの空気が読めないエーレとコルティナでもありません。最初の何年かは今まで通り他家の大会に出場していても、いずれは自粛する方向に向かうものと思われます」


「そうなると、観客動員数は大幅に減少、興行収入も目に見えて落ち込んでしまうだろうな」


「主催者側にとって、カネよりも心、言い換えるならメンツが重要になって来ます。まかり間違ってメンツが潰されれば、道場にとって死活問題です。『純粋に剣の腕を競い合う』という奇麗事だけでは済まないのです」


「いつまでも無邪気な子供のままではいられない、か」


 そう言って、目の前のシェルシェを見上げるおじいちゃま。


 うん、我が愛しの孫娘ながら、無邪気と縁遠いにも程がある。

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