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続いて後編のユールズモン編。
舞台は王宮の庭園から、月明かりに青く染まる幻想的な森の中へと移り、白馬に跨り手綱を取る騎士ミノンと、その正面に横座りで支えられているパティ姫という、馬上の美男と美女のツーショットから始まる。本当は美女と美女なのだが、騎士ミノンがあまりにも男前過ぎて違和感がまったくない。
と、突然道の脇の茂みの中から、手に大きなナイフを持った十人程の盗賊が、白馬を取り囲む様にわらわらと現れる。
これに対し、パティ姫を守る様に片手でしっかりと引き寄せつつ、もう片方の手で手綱をしっかりと握り、何とかこの場をしのごうと、真剣な表情で機を窺う騎士ミノンはやっぱり男前。
ここでパティ姫が、危機的状況下にあって慌てず騒がず、自分の着けていた首飾りを外し、騎士ミノンにそれを手渡した。すると、騎士ミノンの手の中で、その首飾りはまばゆい光を放ちながら、全長五メートル程の巨大なランスに変形。
質量保存則を無視しまくった巨大武器を前にしてあっけにとられている盗賊達に対し、馬上からランスを豪快に振るう騎士ミノン。暴れゾウの長い鼻に吹っ飛ばされる原住民の様に、あっと言う間になぎ倒されて行く盗賊達。
盗賊が全員あっけなく倒された後で、巨大なランスはまた光を放ちながら元の首飾りに戻り、騎士ミノンがそれをパティ姫の首に着けてやると、姫の胸元で首飾りは月光を受けてキラキラと輝き、
「ユールズモンは幸運の守り神」
というテロップが入って、終了。
前編ではパティの美しさが強調されていたのに対し、この後編ではミノンの凛々しさが強調された作りになっており、男装のミノンに倒錯的な魅力を感じるお姉様方のハートをがっちりとつかんだのは言うまでもない。
このパティ姫と騎士ミノンによるファンタジーな前後編CMは、先行するエーレとコルティナのCMと連続する形でオンエアされ、実質的にエディリアを代表する四人の美少女剣士勢ぞろいの四連CMが完成し、狙い通りの相乗効果を上げる事になる。
パティ姫、騎士ミノン、魔女コルティナといったファンタジー要素が受ける一方、一人仲間外れになった「お風呂に浸かって百まで数える幼女」エーレは、ますますナーバスになってしまったらしいが。
「大丈夫です。アンケートの結果、四連CMで一番人気があったのはエーレさんのお風呂CMですから」
そんな的外れなフォローをするエーヴィヒへ恨みがましい一瞥をくれた後、
「次こそは本当の本当に冒険活劇風CMでお願いします」
懇願してみたものの、何となく悪い予感がしてため息しか出ないエーレ。