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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十三章◆◆ 魔女と幼女と姫と騎士の四連CMについて
387/635

◆387◆

「それに、あのコルティナの事です。今回私を陥れたのは、アトレビド社と示し合わせて何か企んでいるからに違いありません」


 そんなエーレの勘を裏付ける様に、エーレのお風呂CMのオンエアに少し遅れて、菓子メーカーのアトレビドがぶつけて来た新CMの内容は以下の通り。


 大きな窓から白いレースのカーテンを通して淡く陽光が射しこむ、アンティーク家具が置かれた、どことなく落ち着きと風格を感じさせる部屋。


 お馴染みの黒いとんがり帽子を被り、黒いロングドレスの上に、黒いローブを羽織って魔女の格好をしたコルティナが、ソファーに澄ましこんで腰掛け、テーブルの上に置かれた白い皿から、例の中毒性の高いスナック菓子を取って口にする。ただそれだけの映像である。


 いつもの様にギャグをかますでもなく、全てをぶち壊すオチが付くでもない。


 しかし、おふざけを封印したコルティナは「黙っていれば超美人」である。ただそれだけの映像であるにも拘わらず、子供も大人も思わず息を呑んで見入ってしまう程の、コルティナ本来の美しさが凶悪的なまでに表現されていた。


 CMの最後に、その女神を思わせる優しげな微笑を浮かべた顔がアップになり、

 

「みんな、ふわふわになってね」


 と、意味不明な言葉を口走るものの、その落ち着きのある声音により、裏に深い意味があるのではないか、とすら思わせてしまうから不思議である。


 これだけならば、もちろん普通のCMであり、エーレにとって何の問題もない。


 が、このCMをアトレビド社は、意図的に例のエーレの無邪気なお風呂CMの前後に流れる様に工作し、その結果、


「同じ高校三年生なのに、コドモっぽいエーレとオトナっぽいコルティナ」


 のコントラストが強調される結果となる。


 片や、お風呂に肩まで浸かって無邪気に百まで数える幼女、片や、アンティークな居間で優雅にティータイムとしゃれ込む淑女、と互いが互いをひきたてる相乗効果を生み、


「お風呂で百まで数えるエーレちゃん、ちっちゃくて、かわいい!」

「本当はすっげえ大人びた感じのレディーだったんだな、コルティナ」


 この連動する二つのCMは非常な好評を博したが、


「よくも私を踏み台にしたぁああ、コルティナアアアアア!」


 大人っぽく見られたい年頃のエーレにとっては、屈辱極まりなかったらしい。

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