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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十二章◆◆ 女当主による本物の人間を使った実験について
381/635

◆381◆

 「全国格闘大会推進委員会(仮)』のメンバーに対し、姿を現す事なく電話一本で指令を下すやり方が、どこか特撮ヒーロー番組の悪の組織の大首領を思わせるシェルシェ。


 ただこれは、マントノン家の当主という多忙な身に加え、「全国格闘大会推進委員会(仮)」については元々個人的に介入しているだけなので、どうしても優先度を低くせざるを得ない、という事情もある。その辺の事情も踏まえて、


「あくまでも『全国格闘大会推進委員会(仮)』の主役は格闘界の皆さんです。これからも私は表に出る事なく、陰ながら支援させて頂きます」


 委員会(仮)にも、そんな風に一歩下がった立ち位置に留まる事を伝えてはいるものの、


「とりあえず、定例会議の議事録と公開合同稽古の活動報告は、先日お送りしたフォーマットに則った形で、きちんと作成しておいてくださいね。いずれ、『全国格闘大会推進委員会(仮)』を公式団体に認定してもらう際の手続きに必要になりますから」


 もちろん、裏から必要な指令を下す事も忘れない。


 これに対し、委員会(仮)のメンバーも、


「忙しい合間を縫って、何から何まで委員会(仮)の面倒をみてくれてるんだから、大したもんだ」

「借金の借り換えとか、個人的にも色々力になってくれてるしな」

「おんぶに抱っこで、本当に情けない話だが、かくなる上は、『全国格闘大会』の開催を何としても実現してみせようぜ」


 忠実な悪の戦闘員よろしく、もう何の疑問も反感も抱かずに大首領の指令に従う様になっていた。よく訓練されている。


 この悪の組織の当面の目標は「組織の法人化」という極めて地味なものであり、実現すれば助成金や税制優遇措置などのメリットがあるのだが、そもそも当事者である戦闘員達がそれらのメリット全てを完全に把握出来ているとは言い難い。


「要するに、まず政府のお墨付きをもらって公式団体に昇格するんだろ? 『委員会(仮)』から『(仮)』が外れる訳だ」

「で、その後は?」

「知らん。何かいい事あるんじゃねえのか」


 位の認識が大半である。


「いや、助成金がもらえるのは大きいぞ。こないだもどっかの会社の社長が助成金だか補助金だかの詐欺で逮捕されてたが、結構な額だったぜ」

「企業と武芸道場主の寄り合いとじゃ話が全然違うだろ。俺達の場合、どの位もらえるんだろうな」

「活動に必要な分位は出るんじゃねえか。例えば、いつもマントノン家に出してもらってる、合同稽古の会場を借りる費用とか」


 あやふやな知識を総動員して、色々と憶測を巡らす戦闘員達。


「すると、交通費も全額支給かな。飲食費もいけそうか」

「合同稽古の宣伝用ビラの印刷費用も経費に認められるかもな。ついでに個人道場の宣伝用ビラも」

「それなら、こうやって定例会議を開いてる道場の使用料も取れるかも知れない。多少吹っかけてもいいだろう」


 私利私欲が絡んで怪しい方向へ行きかけるものの、


「まあ、よく分からねえから、その辺の細かい事は全部シェルシェさんに任せようぜ」


 結局、知識もビジョンもない戦闘員達は、悪だくみについて大首領に全面的に依存するしかないのであった。


 悪の組織に大首領が要るのは、どこもこんな感じだからなのだろう。

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