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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十二章◆◆ 女当主による本物の人間を使った実験について
380/635

◆380◆

 孫娘シェルシェと祖父クぺによる、ほのぼのとは縁遠い、ひたすら生々しい金の話が続く。


「現在エディリア政府内では、出資法と利息制限法の上限金利の差額を悪用した、いわゆる『グレーゾーン金利』を厳しく取り締まろうとする動きがあります」


「ふむ、それは聞いた事があるが、中々難しい問題ゆえ難航するのは必至だろうな」


「ですが、私の得た裏情報によれば、この問題を徹底的に是正する為の法改正が一年以内に断行されるらしいのです。この法改正が実現すれば、それまで見逃されていたグレーゾーン金利は完全に違法とされ、かなり大規模な範囲に亘って過払い金の請求が認められる事になります。これは社会的にかなり大きな影響を与えるものと思われます」


「確かに。グレーゾーン金利は消費者金融だけでなく、クレジットカード会社のキャッシングにも及んでいるからな」


「ふふふ、実際、『全国格闘大会推進委員会(仮)』のメンバーの皆さんの借金の内容を調べた所、グレーゾーン金利だらけといっても良い位でしたよ。マントノン家の法務部で、これらの過払い金の請求を一括して行えば、かなりの額が戻って来る事は間違いありません」


「一般個人が弁護士に仕事を依頼すると、結構な額の成功報酬を取られる事もあるからな。ウチの法務部で一括すれば、その辺のロスも最小限に抑えられる」


「返還金を少なく報告してピンハネを企む不埒な弁護士がいないとも限りませんしね。もっとも、ウチの法務部でそんな真似をする者がいれば、生かしてはおきませんが。社会的に」


「マントノン家の関係者で、お前の目を欺こうなどとと考える無謀な輩はおるまい」


「返還金はそれぞれ元の借金の元本に充てて、メンバーの皆さんの負担をさらに軽くします。おおよその見積もりでは、それで借金総額が半分以下になる予定です」


「参った。お前が、そこまで考えていたとはな」


 椅子の背もたれに寄りかかり、孫娘を見上げるおじいちゃま。


「ふふふ、これはほんの初歩です、おじい様」


 妖しく微笑むシェルシェ。これで初歩なら全力を出した時、一体どんな恐ろしい事態になってしまうのか。おじいちゃまはとっても心配。


 後にこのシェルシェの予言通り、グレーゾーン金利を違法とする法改正が一年以内に実現すると、マントノン家の法務部に委託する形で、委員会(仮)メンバーの過去の借金について過払い金請求の交渉が行われ、その結果、借金総額は四分の一以下にまで削減される事になった。つくづく有能な法務部である。


 マントノン家に借金を減らしてもらった委員会(仮)のメンバーはもちろん大いに喜んだが、その内の一人であるケテ・バジャは感謝しつつも、


「まるで悪魔みてえなお嬢ちゃんだな。一体、何十手先まで読み切っているんだか」


 と、改めてシェルシェに畏怖の念を覚えた。


「何の話?」


 そのつぶやきを耳にしたケテの孫娘プランチャが問う。


「マントノン家の当主シェルシェは、お前みてえな単純な田舎娘とは頭の出来が根本から違うって話だ」


「ひどい」


 屈託なく笑い合うケテとプランチャ。


 こんなにほのぼのとした平和な家庭もあるというのに、マントノン家の祖父と孫娘と来たら。

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