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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について

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38/636

◆38◆

 映画序盤、仲良く首を斬られたバカップルの変死体を地元警察が調査するものの、有力な手掛かりは得られずに終わり、舞台はそこから少し離れた古い屋敷に移る。


 物寂しい山奥の自然風景が延々と映し出され、見ているエーレの心の中で、化物がいる訳でもないのに、何かが潜んでいそうな不安な気持ちが大きくなって来た頃、その屋敷をとある大学教授が学生達を連れて訪れる。


 屋敷には没落貴族の男が年配の召使いと共にひっそりと住んでおり、召使いが一行を迎え入れると、廊下にはDVDのパッケージになっている例の甲冑が飾られていた。


 しかも大学教授がその甲冑の足下に注目すると、そこには新しい泥を拭いとった痕跡が!


 『歩く甲冑 ~呪われた剣士の亡霊が首を斬りにやって来る~』、というタイトルと合わせても、考えるまでもなく、事の真相が容易に想像出来、とても親切な演出である。


「この甲冑に何か気になる点でも?」


 没落貴族が、聞くまでもなく分かっている癖に、あえて大学教授に問い質す。


「いえ、見事な甲冑なのでつい見入ってしまいました」


 大学教授も大学教授で、普通に考えてバレバレなのに、すっとぼけてみせる。


 没落貴族が、この甲冑を手に入れるまでいかに苦労したかを自慢げに語った後、一行は応接間に通されるが、皆がその場を去ってからしばらくして、不意に甲冑がカシャッ、と音を立てて震えた。


「ひっ!」


 見ていたエーレも、思わず背筋が震える。素直な、いい観客である。


 応接室に入ろうとしていた最後の学生が、


「今の音、何だろう?」


 と呟き、よせばいいのに、一人で甲冑の様子を見に戻った。お前は大雨の日に用水路の様子を見に行く老人か。


 エーレがハラハラしながらそれを見守っていると、その学生の事は放置して、場面は応接室の中に切り替わる。 


 なぜか一人足りない事には誰も触れないまま、大学教授は今日訪ねた目的を告げ、


「先程の甲冑にまつわる伝説について、お聞きしたい」


 と、話を促した。


 ここから没落貴族の説明タイムになるのだが、観客としては、『歩く甲冑 ~呪われた剣士の亡霊が首を斬りにやって来る~』というタイトルを覚えていれば、全部聞き流しても差支えない内容であったのは言うまでもない。

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