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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十二章◆◆ 女当主による本物の人間を使った実験について
374/635

◆374◆

 マントノン家が会場を用意してくれそうだ、という期待に再びやる気を取り戻して活気づく「全国格闘大会推進委員会(仮)」の元に、さらなる燃料が女当主シェルシェからの手紙という形で届いた。その内容を一言で言うと、


「試験的に他流試合的な合同稽古を行い、それを無料で一般公開してみてはどうでしょう」


 というものである。


「大会開催に向けての地道な宣伝になるんじゃないか、って趣旨らしい。もし提案に賛成するなら、マントノン家でその為の会場を手配して、俺達には交通費、食費、その他を全部支給してくれるって話だ」


 その日の会議場となった道場の道場主が説明すると、


「全部マントノン家でお膳立てしてくれるのか。願ってもねえ話だが」

「いいねえ。こうやってシケた面突き合わせて延々と議論してるより、何も考えずに体動かしてる方が楽だ」

「大会の宣伝だけじゃなく、俺達の道場の宣伝になるかもな」


 基本的に脳筋な参加者達は、全会一致でこれに賛成する。


「あー、道場の宣伝については但し書きが付いててな。『見学に来た一般客を直接勧誘するのは禁止します』とある」


「なんでだ? せっかくのチャンスなのに」


「合同稽古そっちのけで、道場生の争奪戦が始まるからだろ。『チラシ、パンフレットを置くのは可』らしい」


「俺達のやらかしそうな事は全部まるっとお見通しか。マントノン家の女当主は随分賢いな」


 行動を見透かされた一同が感心したところで、


「他流試合って簡単に言うが、ルールを決めとかないとすぐに乱闘に発展するぞ。見学客の目の前で乱闘にでもなったら、宣伝どころか逆に悪い噂が広まるぜ」


 また別の問題が提起される。


「そこは、『もし、ルールの違いが試合の障害になる様でしたら、暫定的にくじ引き等でいずれか一つの流派のルールに決めてください。一試合ごとにルールを変えても構いません』とあるぜ」


「ああ、どれかに合わせるのか。持ち回りなら、別にいいんじゃないか」


 シェルシェからの手紙には、他にも何項かに亘って要望事項が記載されており、それらの一つ一つが合同稽古を実現する為に事細かく配慮されたものだった為、「全国格闘大会推進委員会(仮)」の参加者達もすんなりとそれらを受け入れた上で、


「随分、気を遣ってくれてるな。それでいて、『こっちで色々用意してやってんだから、黙って従え』と高圧的に言って来ない辺り、いいとこのお嬢様らしいや」


 結果、彼らの間でシェルシェの株がさらに上昇する。


 確かに、シェルシェは「黙って言うことを聞け」と命令を下すタイプではない。


 仕掛けた罠にそれと気づかせずに獲物を追い込むタイプである。

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