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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について

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37/636

◆37◆

「どうせ見るなら、大画面で見よ?」


 応接室にある液晶テレビも結構な大画面なのだが、コルティナは、レングストン家のAVルームに移動する事を提案した。そこでは、ほぼ壁一面の大スクリーンと、立体的に配置された高音質スピーカーとで、映画館並の臨場感溢れる動画を楽しむ事が出来るのである。


 しかも鑑賞中、部屋は暗いので、ホラー映画を見るには最高の環境だった。


「い、いいわよ。じゃ、じゃあ、早速移動しましょ」


 素直に、「怖いから嫌」、と言えずに虚勢を張ってしまう自分の性格を呪いつつ、エーレはコルティナをAVルームに案内する。


 事前にしっかりトイレを済ませてから、エーレは内心ビクビクしつつ、『歩く甲冑 ~呪われた剣士の亡霊が首を斬りにやって来る~』を、コルティナと共に鑑賞開始。


 映画冒頭、激しい雷雨の夜、山奥にある湖のほとりに停めた車の中で、若いバカップルが裸でくんずほぐれつの真っ最中。


「こ、これ、子供は見ちゃいけないんじゃない?」


 激しく動揺しつつ、エーレが言うと、


「大丈夫ー、特に指定はないし、こういうのはすぐ終わるから」


 そんなコルティナの言葉が終わらぬ内に、いきなり車のフロントガラスが音を立てて粉々に割れ、まず男の首が剣で刎ね飛ばされた。


 悲鳴を上げながら、裸の女が車から這う様にして逃げ出すと、目の前には、銀色に輝く甲冑の脚部が立っている。


 女が顔を上げた途端、剣が振り下ろされ、切断された首が落ち、続いて胸も露わな上体が泥濘にひしゃげた。


 夜の闇の中、豪雨の降りしきる音に混じって、カシャン、カシャンという金属音が遠ざかって行き、不意の雷鳴と共に、地面に転がった女の生首が閃光に照らされて、大アップで映し出される。


「ひぃっ!」


 変な声を上げて、ソファから少し飛び上がるエーレ。


「うふふ、血の出方が変だったよねー」


 隣ではいつものふわふわした口調で、コルティナが呑気に批評している。


 こんな状態があと一時間半も続くのかと思うと、泣きたくなるエーレだった。

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