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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
369/635

◆369◆

 マントノン家の屋敷の書斎へその日のララメンテ家の大会について報告する為にやって来た現当主シェルシェが、


「その様な訳で脇腹を痛めたパティは今、自分の部屋のベッドで養生しています」


 大会とはほとんど関係のない、妹パティの変態行為に対する制裁措置について報告すると、


「出来れば、もう少しやんわりと暴走を止めてやれたら良かったのだが」


 前々当主にして祖父のクペは、何かを諦めた様な顔でため息をついた。


「あの子がやんわりと止まってくれるなら、私も苦労はしません」


「とは言え、報道陣がちょうどそこへやってきた所だったのだろう? 当主が自分の妹に度を超えた体罰を与えたとあっては、外聞が悪くないか?」


「ふふふ、パティの『大道芸人』の二つ名はダテではありません。報道陣の前では脇腹の激痛をこらえて、営業用スマイルを完璧にこなしていましたよ」


「大したプロ根性だ。パティのそういう所は褒めてやりたい」


「どの道でも、『己に打ち勝つ自制心』は大事ですからね」


「その自制心が、どうして発作的に吹っ飛んでしまうのだろうな」


「まったくです、と言いたい所ですが、我が身を振り返れば、人の事を言える程自制出来ているかどうかは、やや疑問です」


「まあ、お前達はまだ若いのだし、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれん」


「ふふふ、そう言うおじい様も自制出来ていない事がありますね?」


「何の事だ?」


「知っていますよ。お父様に、『今度ヴォルフはいつ来るんだ?』と、しつこく電話しているそうではないですか」


「い、いや、その、別に電話する位いいだろう。身内なんだし。スピエレ本人から聞いたのか?」


「いいえ。独自の情報源からです」


「じゃあ、ばあさんか? それとも誰か他の――」


 そこまで言いかけた所で、クペはハッとして、


「まさか、盗聴か?」

 

 ちょっと蒼ざめた。


「さあ、どうでしょう? ともあれ、身内に電話するのは構いませんが、度を超えて催促するのはあまり頂けません。どうかあの平和な家庭の親子水入らずの時間を尊重して頂く様、自制の程をお願いします、おじい様」


 妖しく微笑むシェルシェ。


「お、おう」


 そう言うお前も、色々な意味で自制出来てないかもしれない。


 そんな言葉を口にしかけて呑み込むおじいちゃま。


 こうして、おじいちゃまに得も言われぬ恐怖心を植え付けた後、報告を終えて自分の部屋に戻ったシェルシェは、


「ふふふ、元気にしていましたか、ヴォルフ?」


「はい、シェルシェおねえさま」


 人には「あまり電話するな」と言っておきながら、自分は遠く離れた平和な家庭で暮らす可愛い「独自の情報源」にちゃっかり電話を掛けていた。

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