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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
365/635

◆365◆

 一方の長剣で攻撃すると同時にもう一方の短剣を防御に回す二刀流のスタイルは、横置きの大太鼓を二本の撥で叩く姿にも似ている。


 自分より背の高い、というより自分がちっちゃいせいで相対的に大きく見えるコルティナに対し、連打に次ぐ連打で積極攻勢を仕掛けるエーレの姿は、荒々しいリズムを叩き出す太鼓奏者の様であった。


 大太鼓の演奏、もとい決勝戦を見守る観客達は、いつまでもこの荒々しいリズムに酔い痴れていたいと思いつつ、突如この演奏に終止符を打つであろう決定的瞬間への期待に胸を躍らせてもいる。


 しかし、この大太鼓、ただ大人しく打たれているだけではなく、その一打一打を的確に防御しながらふわふわと後退しているので、構図的には、うっかり太鼓台のキャスターを固定するのを忘れたまま、そこに乗っている大太鼓を叩いてしまった為に、ふわふわ逃げる太鼓とそれを必死に追いかけながら叩こうとする子供に見えない事もない。


「ちっちゃいのに頑張るなあ、エーレは」

「でも、あれだけ激しく動いたら、延長戦になった時、スタミナ切れを起こすぞ」

「何が何でも時間内に決める覚悟なんだろ。逆にコルティナは体力を温存しておいて、時間無制限の延長戦に持ち込もうとしてるんじゃないのか」


 観客達からそんな声が聞かれ始める一方、


「ふふふ、今のコルティナにそんな余裕はありませんよ。動きは小さくても、エーレの乱打を防ぐだけで、体力と精神力をかなり消耗しているはずですから」


 シェルシェは、追われる太鼓も追う子供も、共に疲労の度合いは変わらないと見ている。


「それにあの二人の事だ。延長戦に入っても、まだ十分に戦えるさ」


 ミノンは自分のスタミナを基準にして物を考えている。


「エーレのちっちゃくても頑張る姿は最高です」


 パティは双眼鏡を握りしめながら、つい本音を漏らす。


 様々な意見が飛び交う中、試合終了まで後五秒となった時、猛攻をかいくぐってコルティナがふわっと放った一打がエーレの左胴を捉え、一瞬遅れてエーレの長剣もコルティナの頭上を打ち据えたが相打ちにはならず、コルティナの一本が認められる。


 観客席から大きなどよめきが起こる中、 両者開始位置に戻って仕切り直し、エーレが速攻を仕掛けるも、コルティナはふわふわと間合いを取って残りの数秒間を防ぎきり、そのまま試合終了。


 エーレの三冠達成を阻止する形で、コルティナの優勝が決まる。


「ふふふ、素晴らしい演奏でした」


 シェルシェは大太鼓と子供に惜しみない拍手を送った。

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