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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
364/635

◆364◆

「とにかく相手方の天才美少女剣士を倒せばいいんだ!」


 この日に備え、ララメンテ家の選手達はエーレ攻略法を、レングストン家の選手達はコルティナ攻略法を、限られた時間の中で、それぞれ独自の手法によるデータ分析を用いて入念に準備して来たのだが、結果から言えば、


「天才美少女剣士には勝てなかったよ……」


 この日のエーレとコルティナの強さは文字通りの鬼で、いかに優れたデータ分析を以てしても簡単に勝てる相手ではないという事を、両家の選手達は改めて思い知らされたのだった。データ分析で遅れを取るマントノン家の選手達は言わずもがなである。


 そんなデータ分析主義の限界を思い知らされた選手達も、決勝戦が始まるや、「意気消沈してる場合じゃない、この結末をしっかり見届けなきゃ」と、二時間サスペンスドラマのラスト十五分間を見届ける視聴者の様な気持ちでこの大一番に注目する。


 まずはいつもの様に、左の短剣を前に突き出し、右の長剣を大きく頭上に振りかぶって構えるエーレと、剣をふわふわとした力みのない中段で構えるコルティナとが、四メートル程の距離を取って対峙し、互いに相手の出方を窺いつつ、剣の位置を微妙に調整する。


「やっぱり、3DCGと本物は違うわ」

「そりゃ、CGは一方的な動きしかしないし。こちらの動きに応じて対応を変えて来ないもの」

「CGより本物の方がふわふわしててやりにくかった。何かCG以上に人間離れしてて」


 よほど体験時のインパクトが強かったのか、アウフヴェルツ社制作のコルティナ3DCGモデルと、目の前のコルティナ本人を比較して評するレングストン家の選手達。


「攻撃のタイミングが読めても、こっちの防御が追い付かないと意味ない」

「最初の一撃は何とか凌げても、二撃三撃と続くともうダメだわ。こっちはカウンターを狙うしかないんだけど、それどころじゃない、実際」

「アウフヴェルツの分析力、いや、エーヴィヒさんの愛の力の為せる技かしらん」


 よほど彼氏持ちがうらやましいのか、剣術の話をしているのに最後には、「いいな、頼れるカッコいい彼氏がいて」、というあさっての結論に達するララメンテ家の選手達。エーレが聞いたら、「誰が彼氏だ!」、と逆上するかもしれないが。 


 試合開始から三十秒程経った頃、ついにエーレが前に出て、相手の頭上を狙って右の長剣を振り下ろすが、コルティナはこれをふわっと自分の剣を軽く振って払う。さらにコルティナは、その払った剣をふわっと戻す様にしてエーレの左胴を狙うが、エーレはこれを左の短剣を下ろして阻止する。


 そこから鍔迫り合いとなるも、両者すぐに離れて距離を取って対峙。数秒後、エーレがまた飛び出してコルティナの左手を狙うが、コルティナは剣の位置を下げてこれを阻止し、右後方へ下がって間合いを取る。


 それをきっかけに、じりじりと追うエーレとふわふわと逃げるコルティナの構図が出来上がり、エーレは頻繁に攻撃を仕掛け、コルティナが防御に専念する展開が続いた。


「エーレの攻撃、全部読まれてない?」


 一見エーレが優勢に見えるものの、共に稽古に励んで来たレングストン家の選手達は、実はエーレが攻めあぐねていると判断。


「防御で手一杯なのか、反撃のチャンスをひたすら窺って、結局何も出来ないのか」


 一方、ララメンテ家の選手達は、普段何を考えているのかさっぱり分からないコルティナを、ここでもどう判断していいか分からない模様。


 思惑は違えど、双方、色々な意味で試合から一瞬たりとも目が離せない。

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