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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
361/635

◆361◆

 巨大会場に押し寄せた数万人規模の観客が注目する中、レングストン家のエーレとララメンテ家のコルティナは、その期待を裏切る事なく次々と対戦相手を瞬殺し、両者直接対決となる決勝戦に向けて順調にコマを進めて行く。


 先の二大会にも増して闘志を燃え上がらせているエーレを見て、


「もしかすると、エーレはパティと戦ってるのかもしれないな」


 などという穿った見方をする者もいた。もちろん、中学生の部で見事な二刀流を見せたパティに対し、


「いい気にならない事ね、パティ。長年かけて磨き上げた本場の二刀流を、とくと観客席で見ているがいいわ!」


 という対抗意識を見せ付ける感じの熱血スポ根路線に沿った想像であり、


「直接ブチのめせない変態痴漢魔パティに見立てて、こいつをボコってやる!」


 と八つ当たりする感じのギャグ漫画的な妄想ではない。念の為。


 一方、「闘志」という言葉が似合わないにも程があるふわふわなコルティナを見て、


「もしかすると、コルティナは誰とも戦ってないのかもしれないな」


 などというひねくれた見方をする者もいた。もちろん、その無駄な動きのない見事な技に対しての、


「相手に勝たんとする妄執を越えた所にある、無念無想の境地」


 という、ある意味最上級の称賛であり、


「試合中はやる気なさげだし、多分ありゃ何も考えてないぜ」


 同じ内容なのに言い方を変えるとただの中傷になってしまう方の意味ではない。多分。


 エーレとコルティナの強さに観客達が盛り上がるだけ、と言っても誇張ではないこの大会、幸か不幸かそのどちらかと対戦して瞬殺された選手達の中には、


「一年前ならまだ、『あの人達に勝てるかもしれない』、って無理に思えない事もなかったんだけど。本当に勝てるかどうかは別として」

「分かる。今のあの二人は、もう私達の手が届かない場所に行っちゃった感がある」

「やっぱり、剣術道場のお嬢様って、私達とは根本から違うんだろうなあ」


 などとため息をつく者もいた。


 それはまるで、遥か彼方に輝く星を見上げる子供達の様。


「才能があって、それを伸ばす環境に恵まれてて、本人にやる気があったら、そりゃ、強くなっちゃうよね」

「でも、マントノン家の前当主みたいな例もあるし」

「才能がないと、環境に恵まれてて、本人にやる気があっても、強くなれるとは限らないって事よ」


 剣術界から身を引いて早や四年、それでもマントノン家前当主スピエレは、本人の与り知らぬ所で時々こうしてディスられる事で、人々の心を少し軽くするのに一役買っている。


 単にオチ要員とも言う。

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