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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
357/635

◆357◆

 姉の『巨大怪獣』ミノンの三冠達成という偉業を最後の最後で阻止するという、何ヶ月もかけて並べたドミノ倒しの世界記録更新となる一枚を指で押さえて止めるにも等しい、血も涙もない鬼の様な所業をやってのけた妹の『大道芸人』パティだが、観客達はこの空気を読まない決着に対し、


「さすが『大道芸人』、一番おいしい所を全部持ってったな!」

「『巨大怪獣』はラストで倒されるのがお約束ってもんよ!」

「あんたら姉妹が一緒に戦った今年の大会、最後まで楽しめたぜ!」


 それはそれで大いに満足した模様で、各自が思い思いにハイテンションでわめき散らし、会場内に反響してやかましい事この上なかった。大人数が集まる場所は、お祭り騒ぎの血を騒がせるのである。


 興奮冷めやらぬまま閉会式が無事終了し、優勝インタビューが始まると、


「私は先のレングストン家の大会の後、ずっと二刀流の特訓に励んでいました。それがこうして優勝という形で報われた事を嬉しく思っています」


 山奥に籠もってひたすら修行に励むという、まるで剣豪小説の様なパティの体験談に観客達は耳を傾け、改めてこの「大道芸人」の剣術に対する徹底ぶりに感心する。マントノン家の三姉妹は皆そろって剣術キチガイ、もとい剣才に恵まれた努力家なのだ。


「二刀流と言えば何と言ってもレングストン家のエーレさんですが、残念な事に私より四つ年上なので、大会で剣を交えられるのはまだまだ先の話です。エーレさんの二刀流に私の二刀流がどこまで通用するのか、是非ともこの身で確かめてみたい、と切に願っています」


 その二刀流対決を見たいと願っている大半の観客達も同意する様に、うんうん、と頷いていたが、当のエーレ本人は、


「二刀流対決は望む所だけれど、それが実現するまでに、大会のルールが改正される事を切に願ってるわ。『試合後に互いの健闘を称えると見せ掛けて、相手に痴漢行為を働く事を禁ず』って具合に」


 試合とは全然別の恐怖に怯えていた。事実、今日の大会でもパティと戦った相手はもれなく全員痴漢されている。姉を除いて。


 それからパティは、出場選手と観客と大会運営関係者に感謝を述べ、来年もまた全国の強豪と競い合える事を願いつつインタビューを終えた。


「パティは今回、ウチやレングストン家のデータ分析主義の批判はやらなかったね。なんでだろ」


 会場が拍手に包まれる中、ララメンテ家の応援団の一人が意外そうな口調で、素朴な疑問を口にする。


「序盤はともかく、パティは中盤以降ちょっと押され気味だったからねー。大口を叩くのは控えたんじゃないかなー」


 コルティナがふわふわとした口調でそれに答える。


「それより、もっとエーレ関連で笑いを取って欲しかったなー。『巨大な姉には勝てたので、今度はちっちゃい子を倒す方法を考えます』とか、『エーレさんはちっちゃくて可愛いので、特別に中学生の部にも出場する権利を与えたらどうでしょう』とか」


「それは流石に、レングストン家から苦情が来るわ」


 コルティナの妄言にツッコまざるを得ないララメンテ家の仲間達。

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