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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
353/635

◆353◆

 マントノン家の三女パティが「大道芸人」と呼ばれているのは伊達ではない。


 剣だけでなく、ナイフ、槍、棒など様々な得物の扱いにも慣れており、それらをまるで曲芸の様に自由自在に操る姿は、今やテレビのバラエティー番組でお茶の間にすっかりお馴染みとなっている。


 だから、ララメンテ家の全国剣術大会の中学生の部で、この「大道芸人」パティが二刀流で試合に臨む姿を目の当たりにした観客達は、


「なるほど、これなら今までのデータ分析も役に立たねえや」

「いや、二年前のレングストン家の大会でも二刀流で出た事があったが、その時は決勝で負けてるぜ」

「そんな事は百も承知で、あえて二刀流を選んだんだろ。まあ一つ、お手並み拝見といこうじゃねえか」


 驚きつつ、感心しつつ、懸念しつつ、期待しつつ。一言で言うと、ワクワクが止まらなかった。


 さらに最初の試合でパティが左手に長剣、右手に短剣を持ち、


「ありゃ、普通の二刀流じゃねえ。エーレと持ち方が逆だ」


 その長剣と短剣を胸の高さで十字に交差し、前に突き出して構えるに至って、


「初っ端から、あんな植木バサミみたいに構える二刀流は見た事ねえぞ」


 観客達のワクワク感はさらに高まって行く。


「逆二刀にしても十字の構え方にしても、一応二刀流の基本よ。普通は、短剣を前に突き出して防御しながら、長剣を振りかぶる構えの方が多いけれど」


 観客席でこれを観ていたちっちゃな二刀使いことエーレが、周囲にいるレングストン家の仲間達に解説する。


「逆に言うと、それだけ扱いが難しい構え、って事か?」


 隣に座るティーフが尋ね、


「状況にもよるわ」


 そうエーレが答えるか答えぬ内に、対戦相手が前に出てパティの頭部を狙って打ち、それをパティは十字にした剣を持ち上げて受け、次の瞬間、短剣で相手の剣を払うと同時に長剣で相手の右側頭部を打って一本取った。


 その澱みのない一連の所作に、観客席からはどよめきの声が上がる。


「見事なものね。あれは付け焼刃じゃなく、相当修練を積んでいるわよ」


 試合中は観客席にいる自分の方に向かって来る危険がないので、忌まわしき痴漢常習者パティを冷静に剣士として評価する事が出来るエーレ。


 動物園で柵越しに猛獣を観て喜ぶ子供の様に。

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