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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について
35/632

◆35◆

 天然ボケ当主ムートの予想通り、マントノン家の選手に優勝を許してしまったにも拘わらず、大会翌日からレングストン家の道場へ入門を希望する者の数は、小学生女子を中心にじわじわと増加して行った。


「名誉はさらって行きつつも、実益をきちんと残していく所が、シェルシェらしいわ」


 大会から一週間後、レングストン家の屋敷内にある応接室の一つで、ソファに浅く腰掛けたエーレはそんな感想を述べた。深く腰掛けると、ちっちゃいからソファに埋もれてしまう危険性がある。


「頭がよくて、気配り出来る子だからねー、シェルシェは」


 その日、エーレに会いに来ていたララメンテ家の三女、コルティナ・ララメンテが、ふわふわした口調でエーレに同意した。


 子供っぽく見られるのが嫌で、普段から立ち居振る舞いをきっちりする様心掛けているエーレと対照的に、少し大人びた容姿のコルティナは、肩に届く位に伸ばした茶色い髪をふわふわさせ、そよ風に揺らぐカーテンの様なふわふわした服を好み、ふわふわした笑顔で、ふわふわした内容の言葉を話す。


 ただし、全体的にふわふわしている感じを与えるものの、背筋は案外しゃんとしており、武芸の名門の令嬢である事をそれとなく覗わせていた。


「要は計算高い、って事ね。いざ試合になると、計算抜きで暴れまくってたけど」


「シェルシェは試合中、おっかない顔してたよねー」


「観客席から見えたの?」


「うん、高倍率の双眼鏡持って行ったから。シェルシェがあんな怖い顔するの、初めて見た」


「あれが本性だったのね。もっとも、試合中は私だってあんな顔してるかも」


「エーレも真剣だったけど、すごく楽しそうな顔してたよ。見てるこっちが幸せな気分になる位」


「もしかして試合より、選手の表情を熱心に観察してたんじゃないでしょうね」


「試合中の選手の表情はしっかり見ておいた方がいいよー。特に目の配り方とか」


 ふわふわしているが、時々鋭い事を言うコルティナ。


「それは確かに一理あるわ」


「男子の部にカッコいい子がいると、目の保養にもなるし」


 時々鋭いが、やはり色々な意味でふわふわなコルティナ。


「気になった男の子がいたら紹介するわよ。ウチの道場生なら、すぐ連絡つくから」


 冗談っぽく言ってみせるエーレ。


「じゃあ、お言葉に甘えて、個人情報だけ教えてもらおうかな。無言電話していっぱい声を聞いて、家の前で待ち伏せしていっぱい写真撮るの」


「やめて、ウチの道場生にストーカーはやめて」


 コルティナの返答に不穏な空気を感じ、思わず焦ってしまうエーレ。


「うふふ、冗談だってばー」


 そんな風に焦るエーレを見て、ふわふわ笑うコルティナだった。


 小動物を困らせると反応が可愛いからといって、やり過ぎは控えるべき。

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