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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
349/635

◆349◆

 マントノン家の選手達が早々に姿を消すと、大会はレングストン家とララメンテ家の全面戦争の様相を呈し、「狙うは総大将の首ただ一つ」とばかりに敵方のラスボス格であるエーレとコルティナに雑兵達が果敢に挑むも、圧倒的な実力の差はいかんともしがたく、ほぼ瞬殺に近い形で次々と敗れ去り、結局決勝戦は先日のマントノン家の大会同様、ラスボス同士の一騎討ちとなる。


「今日はホームの有利でエーレ優勢か。コルティナは、『次の自分の所の大会で勝てばいい』位に考えてそうだし」

「コルティナが何を考えているかなんて、誰にも見当つかねえよ。ま、そこが面白いんだが」

「もうここまで十分楽しませてもらったから、どっちが勝とうが負けようが関係ないわ。強いて言えば、コルティナが勝てば、あの優勝インタビューに見せかけた漫談が聞けてお得だって事位かな」


 ここまで予想通りの流れに満足した観客達も、最後の一戦の勝敗については予測不能であった。


 いよいよ決勝戦が開始されると、先の大会の時とは打って変わり、エーレは序盤から積極的に前へ出て、二剣による連打をコルティナに浴びせ、コルティナは動揺する事なく最小限の動きでそれらをふわふわと防ぎ止める、という展開が続く。


 観客達もエーレの派手な立ち回りに呼応するかの様に歓声を張り上げ、会場は大喧騒に包まれた。


 この猛攻に押される様にして、コルティナはふわふわと後退を繰り返していたが、不意にひょいと左手で剣を突き出してエーレの喉元を突き、これを待っていましたとばかりに、エーレは左の短剣でその突きを払い落しつつ、右の長剣でコルティナの頭部を打ち据える。


 これが一本と認められ拍手喝采が湧き起こる中、両者初期位置に戻って試合が再開されると、先制したエーレは左の短剣を前に突き出し、右の長剣を高く振りかぶって、やや間合いをとってそのままぴたりと静止し、コルティナが仕掛けて来るのを待ち構えた。


 ところが一本先制されてもコルティナは焦る様子もなく、ふわふわと剣を中段に構えつつ、ふわふわと立ち位置を変えながら、エーレに打ち掛かるタイミングを見計らっている。


 時折、相手の意表をつく様に、前に出てふわっとした一打を放つコルティナだが、エーレは二剣を巧みに使ってこれを阻止し、その度に観客達から拍手が送られる。


 残り時間二秒となった所で、不意に前に飛び出したのはコルティナではなく、エーレの方だった。


 エーレが右手を伸ばして素早く振り下ろした一打がコルティナの頭部を打つと同時に、コルティナのふわっとした一打もエーレの頭部を軽く捉える。


 これが相討ちと判定され、勢いのままに衝突した二人が鍔迫り合いになった所で時間切れとなり、エーレの優勝が確定した。


「エーレはずいぶんと手の内を晒したものだな」


 沸きに沸く会場の中、意外そうな表情で冷静に感想を述べるミノン。


「エーレの最初の一本はかなり強引でしたね。一本先制してからは相手を待つスタイルに変えてましたが」


 双眼鏡でエーレをロックオンしたまま、それに答えるパティ。


「ふふふ、先制されているのに最後まで焦らない所がコルティナらしかったですね。むしろエーレの方が追い込まれている様にさえ見えました」


 シェルシェは微笑みつつ、観客席のある一点に向けて双眼鏡を向け、


「あるいは、エーレはアウフヴェルツと共同で立てた作戦を実行していたのかもしれませんね」


 その先では動画撮影に余念のないアウフヴェルツ家のエーヴィヒが、まるで幼い娘が小学校の運動会の競技で一等を取った時の父親の様に心底嬉しそうな表情をしているのがはっきりと確認出来た。


 小学校のプールで水着姿の可愛い女の子がはしゃいでいるのを邪な目で食い入る様に見つめる変質者の様なパティのだらしない表情とどちらが業が深いのかと問われれば、少し悩む所ではある。

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