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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
347/635

◆347◆

 大方の予想通り、決勝戦にはマントノン家のパティとミノンが勝ち残り、大会を主催するレングストン家にとってはあまり面白くなかったかもしれないが、観客にとっては待ちに待ったカードが実現する。


 健闘空しく二人の引き立て役に終わった他の選手達も、自身の試合に煩わされる事なく、この「大道芸人対巨大怪獣」を心ゆくまでナマで観戦出来るとあって、ヒーローショーを夢中になって楽しむ子供の様にわくわくしながらこの一戦を見守った。


 肝心の試合の方は、先のマントノン家の大会の準々決勝の時と同様、両者距離をとっての睨み合いから、時折激しく打ち合い、また離れて長い睨み合いに戻るという、地味ながらも異様に緊迫した展開が続いている。


 ついに両者一本も取れないまま時間切れとなり、延長戦に突入する事が決定すると、


「ふーっ、ほとんど動きがないのに見てるだけで疲れるな」

「せっかくの『大道芸人対巨大怪獣』なんだから、もっと派手に大立ち回りをやってくれてもよさそうなもんだが」

「同門で互いに手の内を知り尽くしてるからこそ、ああなるんじゃねえか。お互いに相手の隙を突く一瞬の機をじっと窺ってるんだろ」


 緊張の糸が切れた観客達は大きな吐息を漏らし、


「あの姉妹、ガチで殺り合ってる様に見えるんだけど。二人共、殺気がハンパじゃない」

「私達の試合の時に、あれだけの殺気が感じられなかったって事は――」

「まあ、そういう事よね」


 力量の差を改めて思い知らされた他の選手達も大きなため息をついた。


 その後、延長戦に入っても似た様な膠着状態が三分程続いたが、最後はパティがミノンの頭部を狙って飛び込んだ所を、逆に一瞬早くミノンがパティの頭部を打って試合終了。


 長い長い緊張が続いた後に訪れたあっけない一瞬の決着に、観客席から湧き起こるどよめきも、「おおーーーー」、と心持ち長めになる。


「これでミノンは、マントノン家とレングストン家の二冠を達成したねー」


 いつもより長めのどよめきが会場のあちこちから聞こえる中、観客席で魔女のコスプレをしていたララメンテ家のコルティナが、周囲の仲間達にそんな事をふわふわと言った。今回の試合とは関係なく、この人の喋り方は元から心持ち長めである。


「次のウチの大会で、中学生の部はミノンに三冠達成されちゃうかもね」


 仲間達の一人が、プライド少なめ現実感多めの感想を述べる。


「そうなったら、お客さんも大喜びだねー」


 ふわふわ魔女が、プライドゼロ商売っ気無限大の返答をするが、


「でもー、そう簡単にいくかなー?」


 思わせぶりにそう言って、周囲にふわふわと微笑んでみせた。


「何か秘策があるの?」


 期待を込めて仲間が尋ねると、


「いや、パティがミノンの三冠をそう簡単には許さないんじゃないかなー、と思って」


 他力本願な回答をする魔女。さらに続けて、


「ほーら、パティの表情をよーく見てごらん。アレは何か企んでる顔だよー。絶対」


 試合を終えて防護マスクを取った二人に目を転じると、優勝を素直に喜ぶミノンに対し、なるほど、確かにパティの方は妙に不敵な笑みを浮かべている様にも見える。


 言われなければ気付かないレベルではあったが。


 と言うより、このふわふわ魔女の戯言に皆が惑わされている可能性もなきにしもあらずだったが。

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