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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
346/635

◆346◆

 中高生の部に比べて遥かに地味な一般の部も滞りなく行われ、マントノン家の大会が全て無事に終了すると、少し間をおいてからレングストン家の大会が開幕し、人々の興味は再びミノンとパティの二人の活躍へと戻る。


「今回もあの二人の独壇場だろう。あの強さにはちょっとやそっとの対策を練った位じゃ勝てっこねえよ」

「いや、分からねえぞ、レングストン家にはパソコンメーカーのアウフヴェルツ社がついてるし、ララメンテ家にはあのふわふわ分析魔のコルティナがいる。この前の大会のデータから、もう二人の弱点とか割り出してるんじゃねえか」

「ほとんどの試合が瞬殺だったから、そのデータ自体不足してると思うが。まあ、あの天才二人にどこまでやれるかが見ものだな」


 大方の予想としてはパティ、ミノンの圧勝であり、無慈悲に蹂躙されるであろうレングストン家に少し同情しつつも、それ以上にこの二大スターの華麗な剣さばきを一目見たいと願う観客が押し寄せ、巨大な大会会場は今回も満員御礼となった。ある意味、マグロの解体ショーを一目見たいと願う観光客が押し寄せる魚市場に似ているかもしれない。


 そしてこの大観衆の注目を集めた解体ショーもとい、中学生の部の大会が始まると、事前の予想通り、レングストン家とララメンテ家の選手達は、前の大会同様パティとミノンに次々と倒されて行き、


「相手があの二人じゃ無理もないが、データ分析も限界があるのかな、やっぱり」


 これまで、「凡人でも努力と工夫次第で天才に対抗出来る」、という希望を与えていたデータ分析主義に翳りが見られる一方、


「こうも見事に一本が決まり続けると、胸がスッとするな。天才って奴は見てるだけで楽しいよ」


 希望の代わりに楽しい夢を見せてくれるこの二人の天才剣士が会場全体を魅了した。


「皆、あの強敵二人を相手によく戦ってくれたわ」


 レングストン家の最後の選手が準決勝でパティとの試合に臨む直前、エーレが観客席でため息をつく。しかしその表情にはどこか清々しさがあった。


「ああ。決して、気合い負けなどしていなかった。特訓の成果を信じて、皆果敢に立ち向かって行ったよ」


 隣のティーフも感慨深げに頷く。


「惜しむらくは、データ以上に時間が足りなかったわね。せめてもう一週間だけでも」


 エーレが言い掛けたその時、パティが前に一歩踏み込んで相手の頭部へ剣を鋭く振り下ろしたが、レングストン家の選手はその剣が振り上げられた一瞬を捉えて、既にパティの喉元を真正面から突いていた。


 これが一本と認められ、会場が大いにどよめく中、エーレもティーフも思わず席を立って歓声を上げる。


 その後、難なくパティが立て続けに二本取って、すぐに勝負を決めたものの、


「あの子が今日の殊勲賞ね」


 エーレとその仲間達は無論の事、他の観客達もこの無名の選手ミュンツェ・ゲルトシャインに惜しみない拍手を送り、対戦相手のパティも、


「よくあのタイミングに合わせられましたね。お見事でした」


 よほど気に入ったと見えて、健闘を称えて抱き合うフリをしながら、ミュンツェの体を必要以上にいやらしい手付きでなで回していた。


「あの子が今日の犠牲者ね」


 感動を台無しにされつつ、ミュンツェに同情するエーレ。

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