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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
345/635

◆345◆

 高校生の部の大会終了後、ララメンテ家の選手達は会場から少し離れた場所にある有名スイーツ店で、いつもの様に残念会と称するお茶会を開いていた。


「皆お疲れ様ー。とりあえず今は美味しい物を食べて、次のレングストン家の大会に備えましょー」


 上にちょこんと一切れの四角いバターが乗った八段重ねのホットケーキの上からメープルシロップをたっぷりとかけ終えたコルティナが、ふわふわの笑顔で皆に告げる。


 圧倒的な強さを誇るエーレに敵わないのは仕方ないとして、他の選手に敗れてしまった人達も、このふわふわ魔女の笑顔につられて、ぱぁっと雰囲気が明るくなり、


「おー!」

 

 と、元気よくこれに応じた。どんな結果であれ、試合の後は落ち込まないのがララメンテ家の流儀である。


 各自色とりどりのスイーツを前に、今日の試合の感想から全然関係ない世間話に至るまで思い思いに陽気なお喋りに花を咲かせる中、


「今年のエーレはまた一段と強くなってたねー。体型はあまり変わってないけどー」


 などと、エーレ本人が聞いたらムスッと機嫌を損ねそうな事をふわふわと言うコルティナ。


「だがそれがいい」

「敵ながら萌えるわ」

「いつまでもあのままでいて欲しいな」


 同調する仲間達も仲間達で、悪気がない分タチが悪い。


「やっぱりアレだねー。恋は女を強くするのかもねー」


 さらに、エーレ本人が聞いたらキシャーッと毛を逆立てて怒りそうな事をふわふわと言うコルティナ。


「つまり、エーヴィヒさんとよろしくやってると」

「見た目はちっちゃくても、中身はもう立派なオンナになってたり」

「お母さん、そんなふしだらな事許しませんよ!」


「まあまあ、お母さん落ち着いてー。どんな時も娘の幸せを願ってあげるのが親の務めというものだよー。ここは温かく二人を見守ってあげるべきじゃないかなー」


「おお、コルティナが長い人生経験を経て酸いも甘いも噛み分けた優しいおばあちゃんみたいになってる」


「でも、ここで最愛のエーヴィヒさんを誘拐して、大会が終わるまで監禁しておいたら、流石のエーレも弱体化するかもー」


「優しいおばあちゃんだと思ったら、とんだ因業ババアだよ!」


 どっと笑う一同。


「拉致監禁は論外として、恋と剣にクライマックスな今のエーレに私達が対抗する術はありそうなの、コルティナ?」


 仲間の一人が、エーレ本人が聞いたら顔を真っ赤にして「やめて」と叫びそうな言い回しで尋ねると、


「こういうのはどうかなー。こっちも対抗して、次の大会までに皆彼氏を作るのー」


 しれっと、皆の心に冷たい刃を突き刺すコルティナ。


「そう簡単に作れれば世話ないわっ!」

「既に彼氏持ちもいるけど、奴ら稽古よりイチャつく方に熱心だゾ」

「そもそもコルティナがどんな彼氏作るのか想像つかないんだけど」


「私のお相手は、なんとマントノン家の次期当主だよー」


「三歳児に手を出す気かっ!」

「ごめん、コルティナ。通報させてもらうわ」

「通報先は警察とマントノン家の現当主と、どっちがいいかな」


 ただ楽しく美味しく姦しく、残念会はコルティナの誘導によって、傍目に本当に残念な会となって行く。


 もちろんこれが残りの二大会に向けて気持ちをリセットして英気を養う会である事を誰も忘れてはいない――はずである。

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