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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
342/635

◆342◆

 例によって試合場の中央で抱き合いながら互いの健闘を称え合うフリをして体のあちこちをまさぐろうとするコルティナに抵抗しつつエーレは、


「いい試合だったわ。次のウチの大会でも戦えるといいわね」


 と、熱血スポ根ものの主人公の様な台詞をかろうじて口にする。


「そんな事より、もっと体の力を抜いてー」


 熱血スポ根なエーレに対し、迷惑なエロ親父よろしく執拗にボディタッチを試みるコルティナ。ついさっきまで神業に近い剣捌きで観客達を魅了していた美少女剣士が、今やただのセクハラ魔である。


「まったく、あなたといいパティといい、もうちょっと真面目にやんなさいよ」


 抵抗しながら呆れるエーレ。


「私はパティに比べればずっと大人しい方だよー?」


 痴漢行為をやめないコルティナ。


「確かにアレに比べたら、愉快犯と変質者の違いはあるけれど」


「ひどーい。私は動物園のふれあいコーナーでモルモットをモフモフする一般客で、パティは幼稚園の保母さんの胸を触ろうとするおませなちびっ子位にしておいてー」


「可愛いイメージにすり替えても犯罪は犯罪だから」


「でも年々、身長差が開いて触りにくくなってねー」


「あまり成長してなくて悪かったわね」


「大丈夫、愛しのエーヴィヒさんに毎日揉んでもらえば大きくなるよー」


「何の話よっ!」


「ロリ巨乳もアリかなー」


「やかましい!」


「うふふ、冗談だよー。エーレはいつまでもそのままでいてねー」


「それはそれで何か嫌なんだけど」


「エーヴィヒさんによろしくねー。『今日のデータをどう分析するのか楽しみにしてます』、って」


「伝えておくわ。エーヴィヒも、あなたが今日のデータをどう分析するのか楽しみにしているでしょうよ」


「それはそれとして、この後のエーレの優勝インタビューも期待してるからー」


「期待されても、普通の事しか言わないわ」


「最後に一言、『エーヴィヒ、愛してるわー! 私と結婚してー!』って、サプライズなプロポーズを」


「天地が裂けても言うものかぁっ!」


 会場内の観客達は戦いを終えて抱き合う二人に惜しみない拍手を送っていたが、まさかこんなしょうもない事を言い合っているとは想像だに出来なかった。

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