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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
341/635

◆341◆

 進境著しい二人の強豪エーレとコルティナに対し、昨年分のデータと断片的に収集した近況報告を基にして立てた対策に従って戦いを挑んだマントノン家の選手達は、ジェット戦闘機に戦いを挑む複葉戦闘機の如く圧倒的性能差で敗れ去り、その華麗な瞬殺が決まる度に大会会場は耳が痛くなる程の大歓声に包まれた。


 見たいモノを存分に見せてもらい満ち足りた表情の観客達とは対照的に、あからさまな態度には出さないものの、


「今、あの二人に勝つのは無理」

「せめて少しでも長く剣を交えて次の大会に向けてのデータに回したいけれど、それすら難しい」

「何より瞬殺されると分かっている試合に出るのは、すごく気が重い」

 

 苦い表情を隠しきれないマントノン家の選手達。その気圧され気味なムードは、エーレとコルティナ以外の外部選手達との試合にも悪影響を及ぼし、全体的に総崩れの様相を呈していた。


「ああ、もどかしい。いっそ自分が参戦したい」


 観客席でじたばたし始めるミノンに対し、


「落ち着いてください、お姉様。マントノン家にまるっきり人なし、という訳でもありません、ほら」


 主にエーレをストーキングしつつも、他の有望な選手達もしっかりチェックしていたパティが、何人かのマントノン家側の有力選手を指差し、その名前を口にする。


 その中の二人は準決勝まで勝ち残り、そこで共に敗退したものの、何とかマントノン家の面目を保った事で、少しミノンも落ち着きを取り戻した。


 続いては、いよいよ観客達が一番待ち望んでいたエーレ対コルティナの決勝戦である。


 試合が開始されると、エーレは左手の短剣を前に突き出しつつ、右手の長剣を振りかぶり、コルティナはふわふわと剣を中段に構え、やや間合いを取っての長い睨み合いに突入した。


 お祭りムードで興奮気味だった観客達にもその緊張感が伝わったのか、会場内は徐々に静まりかえり、いつしかこの二人の試合の行方を固唾を呑んで見守る雰囲気が出来上がる。


 対峙したままほとんど動きのない両者だったが、わずかにエーレが立ち位置を変えると、それに呼応して、コルティナも彼我の位置関係を保つ様にふわっと立ち位置を変えて行く。


 お互いに攻撃を仕掛けないまま残り時間が十秒を切った時、突然エーレが前に飛び出し、右の長剣でコルティナの頭部を狙ったが、コルティナはふわっと最小限の動きでこれをブロックし、両者接近したまま鍔迫り合いとなる。


 が、鍔迫り合いは長く続かず、次の瞬間、エーレが今度は後ろに飛び退きざま、二刀を素早く振るってコルティナに鋭い連打を浴びせる。コルティナはこれをふわふわと巧みに防ぎきったかの様に思われたが、審判はエーレの放った一打がコルティナの側頭部を捉えていたのを見逃さない。


 試合終了とほぼ同時にこの一本が認められ、そのままエーレの判定勝ちが確定する。


 今までじっと試合に見入っていた観客達から、大きな拍手と歓声が湧き起こった。


 そしてその喧騒の中から、少しずつエーレの勝利を称える「ツンデーレ」コールも湧き起こる。


「ツンデーレ! ツンデーレ! ツンデーレ!」


「やめんか!」


 そう怒鳴り返したいのをぐっとこらえて、互いに礼を済ませた後、防護マスクを取って微笑んで見せるエーレ。


 でも、その可愛いお口の端はちょっと引きつっていた。

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