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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
336/635

◆336◆

 CMタレントとしても絶大な知名度を誇り、今やエディリア剣術界を代表する美少女剣士姉妹の直接対決となったこの一戦は、皆が待ち望んでいた最高の山場であったが、


「でも、姉妹だからなあ。実はもうどっちを勝たせるのか、前もって取り決めが出来てるんじゃねえか」

「この後決勝戦まで残り二試合あるしな。勝ち残った方に余力を残す為に、負ける方が手を抜く可能性もある」

「自分の家の名誉に泥を塗る様な真似はしないと思いたいが。ま、試合を観てから判断しようぜ」


 という具合に、「八百長ではないか」、という疑惑を拭いきれない者も少なくはない。


 それでもこの二人のスター選手が試合場に出て向かい合うと、人々はその存在感に魅了され、会場全体に強烈な期待感が満ち溢れた。


 防護マスクを着けているので顔は見えないものの、どちらが『巨大怪獣』ミノンで、どちらが『大道芸人』パティかはすぐに判別出来る。もちろん、大きい方がミノンである。


 パティも割と背は高い方だが、『巨大怪獣』を前にしては、大人と子供にしか見えない。いや、両方とも子供なのだが。一応。


 いよいよ試合が開始されると、ミノンは剣を上段に、パティは剣を中段に構え、それぞれ初期位置からほとんど動かず、互いに相手の出方を窺った。


 と、パティが素早く突進し、ミノンの右胴を狙って打つが、ミノンもパティの頭部を同時に打ってこれを相殺し、自分の左後方に回り込むパティを追ってぐるんと体を回転させ、両者再び距離を取っての睨み合いに戻る。


 そこから二人共、微妙に立ち位置を変えつつ相手の出方を探り合っていたが、ミノンがほぼ構えを崩さないのに対し、パティは剣の両手持ちと片手持ちを交互に繰り返すというトリッキーな動きを見せる。


 不意にミノンが大きく一歩前に出て片手を伸ばして打った剣が、ちょうど剣から離れた直後のパティの右手を捉えて、これが一本と認められる。その絶妙なタイミングに観客は一瞬どよめいた後、ミノンに大きな拍手を送った。


「何か仕掛けようとしてたが、完全にリズムを読まれてたな、パティ」

「ああ、やっぱり姉だけあって、妹の癖はお見通しって事か」


 両者初期位置に戻って試合再開となり、パティのトリッキーな技もミノンには通用しないだろう、と思われたその時、突然パティが飛び出してミノンの右胴を素早く打った。ミノンも相手の頭部を打って相殺しようとしたものの、ワンテンポ遅れてしまい、相打ちとは認められず、パティの一本となる。


「今度はリズムを読み損ねたな、ミノン」

「妹は妹で、姉の弱点をよく知ってるんだな」


 こうして両者一本ずつ取って試合が再開されると、距離を取っての探り合いから、時折隙を狙っての鋭い一打の応酬が続いたが、中々一本取れないまま時間切れとなり、試合は延長戦に移行する。


 延長戦開始から三十秒程経った頃、それまで距離を取って動かずにいた両者が、それぞれ同時に剣から右手を離して前に飛び出した。


 パティは片手を伸ばしてミノンの喉を狙って素早く突くが、ミノンは体勢を低くしてそれをかわし、片手で持った剣でパティの左胴を鋭く斬る様に打つ。


 これが一本と認められて試合終了。マントノン家の姉妹対決第一戦目は、姉ミノンが勝利した。


「延長にもつれこんだ位だし、互いに手を抜いている様には見えなかったが、やっぱり姉に勝ちを譲った可能性もあるなあ」


 そんな風に勘繰る者達も、試合自体に魅了されていた事は否定出来ず、大多数の観客同様、このマントノン家の次女と三女に惜しみない拍手を送ったのだった。 

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