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規模縮小を余儀なくされたものの、却って小さい会場ならではの一体感が観客と選手との間に生まれたのか、小学生の部の大会はそれなりにいい感じで盛り上がり、最後は主催者側のマントノン家の選手が優勝して無事幕を閉じた。
「小学生が一生懸命試合してるのは、何か微笑ましいな」
「進行もゆったりしてるから、落ち着いて一試合一試合に集中出来たし」
「去年はパティを追っかけるのに夢中でそれ以外はあまり見てなかったが、他の選手達も中々いい試合してたんだろうなあ」
閉会式終了後、会場を後にする観客達も、この小じんまりとした雰囲気をそれなりに楽しめた様子である。
だがそんなほのぼのした感想も、続く中学生の部の大会で、大会場を埋め尽くす観客達の熱狂の渦の中にかき消されてしまう事となる。
「何と言っても、今日注目すべきはパティとミノンだな。姉妹対決が見られるといいが」
「マントノン家の道場生の話じゃ、姉のミノンの方が強いって噂だが、妹のパティが勝つ事もよくあるそうだぜ」
「『巨大怪獣VS大道芸人』か。面白い試合になる事は間違いなさそうだ」
すっかり興味がエディリア剣術界のスター姉妹に移ってしまい、他の選手の事など眼中になくなる観客達。
そして期待通りミノンとパティは苦戦する事なく順調に勝ち続け、その度に観客席からは大きなどよめきの声が上がる。
外部から参加しているレングストン家とララメンテ家の選手達も、このマントノン家の次女と三女の勢いを止める事が出来ず、いつもの倍のスピードで駆逐されて行った。
「悔しいけれど、勝負にならないわ。ここはデータ収集の場と割り切って、残りの二大会で何とか一矢報いたい所ね」
レングストン家の選手の応援に来ていたエーレが、苦々しげにそう言えば、
「一人ならまだしも、あの二人を同時に攻略するのは難しいねー。今日のデータを分析して対策を立てても、それを完全に会得する時間がなさそうだしー」
ララメンテ家の選手の応援に来ていたコルティナも、やや諦め気味に周囲に漏らす。
結局、勢いづいたままのミノンとパティは準々決勝で対戦する事になり、この姉妹対決の実現に、会場の盛り上がりも最高潮に達する。
「ああ、こうして勝ち残ってなければ、私も間近であの二人の試合を見られたのになあ。残念」
などと不届きな事を呟く、同時進行で準々決勝に臨む他の選手もいたとかいないとか。