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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十一章◆◆ 姉より優れた妹が存在するかどうかについて 
334/635

◆334◆

 予想通り、その年のマントノン家の剣術全国大会の小学生の部は、パティが中学生の部に移ってしまった影響を受け、昨年までの大盛況が嘘の様に客が減少する。


 それでも、主催者側がこの事態を見越して会場の規模を小さくした結果、観客席も七割程が埋まっており、特にガラガラ感はなく寂れた感じもしなかった。


「この位の方がやり易いかもね。去年まで、どこの大物アーティストのライブ会場だよ、って感じだったから」

「ただ、会場が狭くなった分、一度に消化出来る試合数が減ったけど」

「次の試合までのんびり出来ていいじゃん」


 会場が小さくなっても選手達はさほど気にしていない様子で、観客の大半を占める身内に応援されながら、ある意味昨年よりのびのびと試合に臨んでいた。


「いい雰囲気ね。やっぱり、武芸はあまり商売っ気を出すべきではないわ」


 レングストン家の選手達の応援に来ていたエーレが、隣のティーフに話しかける。


「だけど、ちょっと可哀想な気もするな。大舞台ならではの緊張感や興奮も、それはそれで捨て難いから」


 ティーフが少し寂しげな表情で答える。


「あなたまでそんな感想を抱く所を見ると、世間の注目を集める事は武芸者にとって危険な誘惑なのかもね。さらにそこへお金が絡むと、道を踏み外しかねないわ。かつて、マントノン家で造反を企てた人気選手の様に」


「そんな人達もいたね。皆、哀れな末路をたどったけれど。でも、私は大丈夫。そこまで人気も才能もないから。造反なんか企てないよ」


 軽く笑ってみせるティーフ。


「人気や才能を語るには、私達はまだ若すぎるわ。剣術は一生かけて修練するものでしょう」


「はは、そうだね。私もショービジネスに毒されたかなあ」


「あそこに、あなた以上に毒されている人がいるけどね」


 エーレの視線の先には、ララメンテ家の応援団がおり、その中で一人魔女のコスプレをしているコルティナの姿があった。これ見よがしに特大麩菓子を食べている。


「ショービジネスに毒されているというより、あの人自体が既に一つのショービジネスになってる気がする」


 そう言って、ティーフは苦笑しつつ、


「でも、不思議と危うい感じはしない。全部分かり切った上で、あえてそこに乗っかっている様な安定感がある」


 と付け加えた。


「私やあなたとは別の次元にいるんでしょうね。あの魔女は」


 エーレが笑う。


「いや、エーレも十分ショービジネスになってると思うけど。キャラクターグッズも一杯出てるし」


 何気ないティーフの言葉に、


「ショービジネスは猛毒だわ」


 笑顔が消えて少しナーバスになるエーレ。

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