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「レングストン家とアウフヴェルツ家が姻戚関係を結んだら、伝統とハイテクの融合だねー、判定機器の導入とか色々捗りそう」
エーヴィヒ関連のネタを次々とエーレに振って、その反応を楽しむコルティナ。
「姻戚関係は永久にあり得ないけれど、ウチとアウフヴェルツとの協力関係が今後も続くのは確かね。ただ判定機器の導入は難しいと思うわ。古参役員が反対するのが目に見えているから」
なるべくエーヴィヒの話題を避けて、剣術関連の話に持って行きたいエーレ。
「前にシェルシェも交えて、三人でそんな話をした事もあったねー。あの時シェルシェは、『流派を超えた統一ルールの下で剣術の全国大会を開催したい』、って力説してたけどー」
「あの後、シェルシェの意見を父に伝えて会議で審議してもらったけれど、ウチの役員達はどうも乗り気じゃなかったみたい。『現状の御三家による大会だけで十分だ』、って」
「今の三大会形式で、各家が十分儲かるシステムが出来上がっちゃったからねー。下手に合同大会を新規にやろうとすると、その導入コストだけでせっかくの儲け分を食い潰しかねないしー」
「ララメンテ家の方はどうだった? もっとも、経営陣はあなたの言いなりでしょうけれど」
「ウチは合同大会そのものには乗り気だよー。ただ、資金不足で積極的に動けないだけー」
「となると、まだ具体的な話合いが出来る段階じゃなさそうね。シェルシェも前途多難だわ」
「シェルシェの事だから、独自に着々と計画を進めてると思うよー。マントノン家は今やシェルシェの独裁体制だしー」
「シェルシェもあなたも実家に対してかなり発言力を持ってるけど、私はお役に立てそうもないわ。当主である父も私の言う事を聞かないし。色々な意味で」
「『お父様ぁ、エーレお願いがあるのぉ』って、可愛くおねだりしてみたらー? 私がムートさんなら、何だって言う事聞いちゃうよー」
「そんな娘の戯言にコロッと騙される父親はすごく嫌なんだけど」
「うふふ、エーレに可愛く迫られたら大抵の人は逆らえないよー。エーヴィヒさんだって、『ねえ、ダーリーン。エーレ、今日は帰りたくなーい』って」
「殺されても言うものかぁっ!」
コルティナに一声吠えた後、エーレは息を整えてから、
「いっそ、あなたがエーヴィヒと結婚したら? なんなら、アウフヴェルツのCM出演も譲るから」
「あのCMはエーレじゃないとダメだよー。大きいお友達が悲しむよー」
「いっそ、ずっと悲嘆に暮れてて欲しいわ」
「それに、エーヴィヒさんとはこれからもデータ分析の良きライバルとして、競い合って行きたいしー。エーレとは末永くコンビを組んでいて欲しいなー」
「あくまでも、剣術のコンビだけならね」
「夫婦漫才のコンビでも可」
「何でそうなるのよ」
「ツッコミはエーレだけど、夜のツッコミはエーヴィヒさんでー」
「やかましいわ!」
その場にハリセンがあったら、エーレはコルティナの頭をスパーンとはたいていたであろう。
むしろ、天性のボケとツッコミであるこの二人の方がコンビに向いているかもしれない。