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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について
303/635

◆303◆

「『全国格闘大会推進委員会(仮)』の皆様に、まずは軽くご挨拶がてら、電話を入れておきました」


「向こうはさぞ驚いたろうな。根も葉もない噂が一気に現実化したのだから」


 マントノン家の書斎で前々当主にして祖父のクペが、現当主シェルシェの報告を聞いていた。


 やけに楽しそうなこの愛しい孫娘は、今度は何をやらかすのやら。


 そんな風に、感心と心配と呆れと恐れがごっちゃになった感情を抱きながら。


「ふふふ、まだ具体的な話をした訳ではありません。それとなく現状を確認しつつ、『応援しています』と告げただけです。もちろん、この言葉に含みがある事を、向こうが気付かないはずはありません」


「遠くからそれとなく、そちらへ近づいている事を告げた様なものだな」


「異国の都市伝説にその様な話がありましたね。捨てたはずの人形から電話が掛かって来て、徐々に近づく様子を伝えて行くという」


「最後は、『あなたの後にいるの』で終わるあれか」


「その様な感じで、今後も協力を徐々に切り出して行く予定です」


 ある意味、タチの悪いイタズラ電話かも知れん。


 そんな考えがクペの脳裏を一瞬よぎったが、もちろん口には出さない。


「で、向こうの様子はどうだった? やはり、統一ルールの制定で揉めている所じゃないのか」


「そこは通過した様です」


「ほう、そこが最大のネックになると思っていたが。中々やるな」


「いえ、結論が出ないまま議論に飽きて、何となく棚上げにされているという状態です」


「通過したと言うよりむしろ立ち往生しているんだが、それは」


「ふふふ、大きな企画を進めている時にはよくある展開です。そのまま企画が立ち消えてしまう事も珍しくはありませんが」


 シェルシェはそこで言葉を切って、微笑み、


「次の段階に進む上で、このような停滞こそが重要な意味を持つのです」


「停滞したダメ会議に未来はない様に思えるのだが」


「いえ、停滞は『妥協』を引き出し易くしてくれます。元々確たる正解などない武芸の事、この『妥協』こそが前進の鍵となるのです」


「なるほど、分からないでもない」


 クペは机に頬杖を突いて、


「要は、『ああ、もう面倒くさくなって来たから何でもいいや。さっさと決めよう』、という事か」


 と身も蓋もない事を言う。


「ふふふ、議論を尽くした後の妥協こそ、会議の本質と言えるのではないでしょうか」


「モノは言い様だな。まあ、好きにするがいい。お手並み拝見と行こう」 


 ヨソ様の会議に首を突っ込んで裏から操ろうとする孫娘の所業を、複雑な思いで応援するおじいちゃまだった。

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