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試合終了後、エーレと抱き合って互いの健闘を称え合うと見せ掛けて小動物をモフる感覚を楽しむコルティナ。
「私を愛しいエーヴィヒさんだと思って、存分に甘えていいよー」
「じゃあ、とりあえずエーヴィヒの横っ面を思いっきり引っぱたいていい?」
わしゃわしゃと頭をなでられながら、営業用スマイルで答えるエーレ。遠巻きには一応麗しきスポーツマンシップの発露に見える様に気を付けている。
「レングストン家の陰の功労者になんて事をー。試合の間中ずっと、エーレの背後にエーヴィヒさんの姿が見えてたよー」
「悪い事言わないから眼科行きなさい。それか精神科」
「戦い方が少し変わったねー、エーレ。読みが鋭く深くなった感じがするー」
「最後は読み負けたけれどね」
「恋は女を変えるのねー」
「一体何の話よ」
「いつまでも子供だと思ってたエーレがねー。私も年を取る訳だわー」
「いや、同じ年でしょうに」
「傍目にはそうは見えないよー」
「ほっといて」
「手塩に掛けて育てても、最後は他人に取られちゃうんだから、娘なんて寂しいものよねー」
「あんたは私の親か」
「だから、早く孫の顔を見せてー」
「その年でボケないで、お願い」
「お笑いのボケと認知症のボケを掛けたいいツッコミだねー」
「やかましいわ」
「色恋ではエーレに先を越されたけれどもー」
「越してない、越してない」
「その分、お笑いで頑張るよー。優勝インタビューではドッカンドッカン行くからねー」
「好きにして、もう」
「お許しが出た所で、メインのネタは『エーレ熱愛発覚』に決まりー」
「もしそのネタをやったら絶交の上名誉棄損で訴えるからね、本気で」
遠巻きには一応麗しきスポーツマンシップの発露に見えるが、会話の内容はいつもに増してしょうもない二人だった。