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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について

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◆296◆

 名門のお嬢様方がこぞってCMに出演した事で、広く一般からの注目を集めたこの年の剣術全国大会も、最後のララメンテ家の大会の高校生の部の決勝戦に至って、いよいよクライマックスを迎える事となる。


「当然、決勝はエーレとコルティナの一騎討ちになるよな。今日のあの二人はやけに好調だし」

「エーレなんか、さっきの準決勝戦を十秒で勝ってたぞ。どんだけ調子いいんだよ」

「コルティナも自分の所の大会じゃ最強モードだからな。今年の大会の最後を飾るに相応しい一戦になりそうだ」


 CMの印象が強く心に焼き付けられた多くの観客達の頭から、CM出演者が一人も出場しない一般の部の存在がすっぽり抜け落ちてしまっているのは仕方ない。CMの影響力の怖い所である。


 出演CM的に言えば、パソコンメーカーアウフヴェルツの動物着ぐるみパジャマ対お菓子メーカーアトレビドのふわふわ魔女との戦いとなったこの決勝戦、着ぐるみパジャマが左の短剣を前に突き出しつつ右の長剣を頭上に振りかぶり、魔女がふわふわと剣を中段に構え、両者十分な距離を取って睨み合うという、いつものスタイルで始まった。一応補足しておくと、もちろん前者がエーレで後者がコルティナである。


「どっちが勝っても二冠達成だ。CMの業種が違うから、企業としてもそれほど勝敗を気にする必要はないだろうけど」

「もしこれが同業種だったら、代理戦争の様相を呈してたかもしれんぞ。武芸の大会に商売っ気を持ち込むのは正直どうかと思うが」

「集団で社員が横断幕持って応援に来て、観客席で自社製品をこれ見よがしにアピールしてたりしてな」


 最後の想定は、この前の中学生の部の応援でコルティナがそのまんまやっていた事である。魔女のコスプレのおまけ付きで。


 誰であれ一度CMに出演してしまうと、そのCMのイメージがしばらく定着する傾向が強いので注意が必要だが、面白がってそのイメージ通りの行動に出る辺りがコルティナらしい所である。


「ずっと睨み合いを続けて、どっちからも仕掛けないな」

「剣の位置を小刻みに変え続けているから、互いに機を窺っているのは間違いない」

「仕掛けるとしたらエーレからだが、下手に手の内を晒すより、延長に持ち込んでから一撃で仕留める方が有利と判断したか?」


 コルティナとは対照的にCMで定着した自身のイメージを嫌がるエーレ。間違っても応援席で動物着ぐるみパジャマなんか着たりしない。そんな事をしたら子供達と大きなお友達とパティとエーヴィヒを喜ばせてしまう。子供達はともかくその他の連中は絶対に喜ばせたくない。


 そのエーレが時間終了ギリギリになってついに動く。


 不意に前方に飛び込み、左の短剣で自分の頭上をガードしつつ、右の長剣で相手の左胴を素早く打ったのだ。


 だがコルティナは慌てず騒がずこれを予期していたかの様に、飛び込んで来るエーレの左手を、自分が胴を打たれるより一瞬早く打っており、勢い余ったエーレを受け止めて鍔迫り合いになる中、これが一本と認められた。


 両者初期位置に戻っての試合再開と同時にちょうど時間切れとなり、その瞬間、お菓子メーカーアトレビドのふわふわ魔女ことコルティナの優勝が確定する。


 終わってみれば実にあっけない幕切れであったが、乱戦気味だった先のレングストン家の準決勝戦より、遥かにコルティナらしいと言えばコルティナらしい試合内容であり、二冠達成という事も加わって会場は大いに盛り上がる。


「今年は全ての部で外部の挑戦者達からララメンテ家を見事に守り切ったな!」


 まだ一般の部が残っている事も、CMでお馴染みのふわふわ魔女の快挙に沸く観客達には些細な事だった。

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