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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について

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293/638

◆293◆

「今年も全国大会がつつがなく大成功の裡に終了出来た事を祝して、乾杯!」

「乾杯!」


 ララメンテ家の経営陣が満面の笑みを湛えつつスタッフ用控室で盛大に祝杯を挙げていたが、まだ大会そのものは終わっていない。むしろ高校生の部がようやく始まった所である。一般の部に至ってはまだ始まってすらいない。


 チケットの売り上げが最大の関心事であるこの人達にとっては、高校生の部の大会会場を観客が埋め尽くす光景を確認した時が色々な意味でピークであり、後は野となれ山となれ状態へと移行するのがここ数年の恒例行事となっている。


 一応、控室にある大画面モニターには会場の様子がリアルタイムで映し出されているが、勝敗の行方は割とどうでもよく、


「今年は各家の令嬢がCMに出演してくれたおかげで、去年にも増して大盛況ですなあ」


 一杯の観客席の方を見て喜んでいるのは、もはや一種の職業病と言ってよい。


 その観客達の一番のお目当てはもちろん、テレビでお馴染みのふわふわ魔女コルティナとちっちゃくても高性能のエーレであり、この二人が試合に出る度に会場は大いに盛り上がる。


「やはり、ウチのお嬢様は群を抜いて強い」

「強くて美少女でCMにも出ていれば、これだけの数のお客さんを呼べるのも当然の事」

「我々の救世主コルティナお嬢様に乾杯!」


 スタッフ用控室も別の意味で大いに盛り上がる。


 その救世主が勝ち進むにつれて会場のボルテージも上がって行ったのだが、喜びの美酒に酔い痴れた経営陣は徐々に救世主の試合の映像に目を向けることさえしなくなる。


 しかし、それは何ら非難されるべき事ではない。彼らの戦いは終わったのだから。


 同じ会場内では青春真っただ中の若人達が全力を尽くして剣と剣を交えつつ戦っているのだが、その戦いの場を用意したのはここで酔い潰れてクダを巻いているいい歳したオッサン達なのである。


「あとはー、うちのおじょーさまにー、まかせちゃえー」


 段々「うちのおじょーさま」に口調が似て来た酔っぱらい達。


 やっぱりちょっと位は非難された方がいいのかもしれない。

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