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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について

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◆267◆

「もしかすると興味を持ったマントノン家が、格闘界に資金援助してくれるかもしれない」


 そんな地獄の底でうごめく亡者達に垂らされた蜘蛛の糸の如きありがたい噂が、不景気真っただ中の零細格闘系道場主達の間にまことしやかに流れ始めた頃、エディリア剣術界シェア第二位のレングストン家の剣術全国大会が満を持して開幕する。


 ここでも小学生の部はパティ、中学生の部はミノンが圧倒的な強さを見せて優勝、それぞれが二冠達成を果たし、レングストン家はマントノン家に見事なまでに蹂躙された形となったものの、この二人の活躍を目当てに会場に足を運んだ大観衆にとっては大満足の結果であり、


「事によると、今年は三冠達成が見られるかもしれない」


 と、最後のララメンテ家の全国大会へ向け、さらなる期待が高まって行く。


 高校生の部では、当然の如くエーレとコルティナの勝負に皆の関心が集まり、


「ここでコルティナが勝てば、こっちも三冠の可能性があるな。残るララメンテ家の大会はいつもコルティナが有利だし」

「だが、エーレが自家の大会でそう易々と負けるとも思えないぜ。この前の決勝だって、エーレが勝ってもおかしくない試合だったんだから」

「どっちが勝つにせよ、高校生の部でも二冠達成はほぼ確定したな。エーレが取るか、コルティナが取るか、ってだけの違いで」


 その二人の強豪以外の選手はすっかり忘れ去られてしまっていた。


「敵はコルティナただ一人。気合を入れて行きましょう!」


「おう!」


 エーレに鼓舞されるレングストン家の選手達も、コルティナの首以外眼中にないらしい。


「今回の『高級ホテルの極上スイーツ食べ放題』は、エーレを倒した人と優勝した人はもちろん、この前の大会でベスト4に残った選手を倒した人にも進呈するから、皆頑張ってねー」


 一方コルティナはエーレ以外に、先の大会で準決勝に残ったマントノン家の二人の選手も賞金首に加えており、ララメンテ家の選手達は、


「エーレと優勝は無理として、そっちならまだ可能性があるかも」


 と、やや後ろ向きなやる気を出していた。


「エーレとコルティナに当たるまでは、全力で勝ちに行く。その二人に当たってしまったら、マントノン家の名に恥じぬ様、堂々と戦って散ろう」


「はい」


 一番後ろ向きなのは、そんな風に言い合っているマントノン家の選手達かもしれないが。

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