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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について
261/632

◆261◆

 マントノン家の全国大会に乗り込んで見事優勝を成し遂げ、観客達を大いに沸かせたコルティナだったが、そんな快挙とは裏腹に、コルティナ以外のララメンテ家の出場選手と応援団は、


「このふわふわお嬢様がまた何かやらかすのではないか」


 と気が気ではない。


 具体的には、


「この後の優勝インタビューで、また碌でもない事を言い出すのではないか」


 と危惧していた。


 自家の大会での優勝インタビューならまだしも、よそ様の大会で極力問題は起こして欲しくない。本人は満足かもしれないが、身内としてはいたたまれないにも程がある。


「ここはマントノン家の大会の優勝インタビューだからね、ウチの大会の過剰な宣伝はNG」

「どさくさにまぎれて自分が出てるCMのお菓子の商品名を出すとか、もっての他」

「その他、関係ないボケは一切禁止」


 インタビューを受ける直前、コルティナに釘を刺しまくる仲間達だったが、


「『やるな』って言われると、やりたくなるのが人情だよねー」

「そんな人情はどこかに捨てて来なさい」


 糠に釘状態のコルティナに、どうしても不安が止まらない。


 結局、「問題発言をした場合、祝賀会でのスイーツ禁止」という、重い罰則が課される事になり、


「幾多の苦難を乗り越えて優勝した選手に、その仕打ちはあんまりじゃないかなー」


 ふわふわと抗議を試みるコルティナだったが、


「幾多の乗り越えた苦難を台無しにする様な真似はやめなさいと言ってるの!」


 もちろん却下された。


 仕方なく、無難に優勝インタビューに応じていたコルティナだったが、


「なんだ、えらく普通の受け答えだな」

「コルティナの事だから、何か一発カマしてくれると思ったんだが」

「他家の大会だから遠慮してんのか? らしくないぞ、おい」


 そんな無責任な観客達がガッカリする様子を見て、サービス精神に火が点いたのか、


「今回、優勝インタビューを受けるに当たり、披露しようと用意していたネタが色々あるのですが、直前になって仲間達から、それらの使用を全面的に禁止されてしまいました。楽しみにして頂いていたファンの皆様には深くお詫び申し上げます」


 と裏事情を暴露するという暴挙に打って出た。


「ついに、規制をくらったのかよ!」

「確かに今までやり過ぎたもんな!」

「構わねえから、ガンガン行こうぜ!」


 無責任な観客達のボルテージがV字回復する。悪い方向に。


 見事に裏切られた仲間達が失望と申し訳ない気持ちを抱えつつ、マントノン家の関係者が集まっている方を恐る恐る見やると、向こうは大人の余裕でコルティナの奇行を笑いながら受け流している様子。


 その中でもマントノン家の当主シェルシェは、


「ふふふ、案外ララメンテ家の皆さんは、コルティナの事を分かっていませんね。おふざけが過ぎている様に見えて、その奥には色々な方面への配慮がしっかりなされているのですよ」


 と、フォローまでしていたのだが、遠過ぎてララメンテ家の選手達には聞こえない。


 その後のコルティナは、具体的な発言は避けたものの、遠回しにこの後の大会の宣伝と、自らが出演しているCMネタ、さらには剣術大会に関係ない小ネタを連発し、会場をドッカンドッカン沸かせる事に成功する。


 こうして最後の最後で観客達を満足させ、優勝を決めた時以上のイイ顔で仲間達の元に戻り、


「ただいまー。自分で自分を褒めてあげたい気分だねー」


 と罪悪感の欠片もなくふわふわと告げると、


「コルティナ、今日の祝賀会でスイーツ禁止決定」


 当然のごとく無慈悲な判決が下され、祝賀会の主役が本当におあずけをくらう事態となった。


 もっとも、皆、こっそり自分の分のスイーツから少しずつ分けてあげたりしていたのだが。


 愛想のいい野良猫に、ついお菓子を上げてしまうノリで。

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