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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 不死身で無敵な殺人鬼となった娘の恐怖について †レングストン家の悪夢†
26/632

◆26◆

 試合の残り時間もあとわずか。互いに一本取っており、先にもう一本奪えば勝利という、非常に緊迫した場面の中、魔物とツンデレ、もといシェルシェとエーレは間合いを取っての静かな睨み合いを続けていた。


 両者蝋人形の様にほとんど静止しているが、よく見れば、シェルシェの中段に構えた剣の微かなゆらぎに合わせ、エーレは前方に突き出した左の短剣の位置を小刻みに調整している。


 動きこそ少ないが、実の所、相手の挙動を必死に読み合っており、両者共に、


「次の一撃で、勝負を決める」


 というベタな結論に向かって、最高の一撃を繰り出すべく、精密な照準を合わせ続けていたのである。


 左の突き出した短剣で防御、右の振り上げた長剣で攻撃、というエーレに対し、その短剣の防御を突破して、なおかつ長剣を振り下ろされる前に相手を打つ、という形となるシェルシェ。


 平たく言えば、タイミング勝負である。


 二人の戦いは、ネズミ捕り対ネズミの、チーズを賭けた戦いにも似ていた。バネが作動してネズミが挟まれたらネズミ捕りの勝ち、挟まれる前にチーズをかっさらえばネズミの勝ち、という具合に。


 一秒一秒が妙に長く感じられる、静まりかえった会場で、


「これは延長戦に入るかな」


 と、多くの観客が思い始めた頃、エーレとシェルシェがほぼ同時に前へ跳んだ。


 エーレは左の短剣で頭部を防御しつつ、右手を伸ばして長剣で相手の頭上を素早く打つ。


 シェルシェは、エーレの挙動を見切って、迷いのない剣をガラ空きの右胴に叩きこむ。


 素人目にはほぼ同時に思えた二つの打撃だが、


「勝者シェルシェ」


 審判はシェルシェが一瞬早かったのを認め、その勝利を告げた。


「レングストン家の令嬢がマントノン家の令嬢に、ホームグラウンドで負けた」

 

 観客のそんなざわめきが耳に入って来ても、全力を出し尽くして戦ったエーレは家の事情など気にする様子もなく、この結果を満足して受け止めている様子であったが、


「ツンデレが負けた」

 

 という言葉だけには、


「誰がツンデレよっ! か、勘違いしないでよねっ!」


 と言い返したくなるのを堪えるのに必死だったらしい。

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