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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について
254/632

◆254◆

 レングストン家の応援団の方でも、この年々パワーアップして行く巨大怪獣ミノンの圧倒的な強さに目を見張りつつ、その試合の一つ一つを食い入る様に観察し、「どこかに付け入る隙はないものか」、と思案に暮れていた。


「あの巨大怪獣はこのまま高校生の部に出ても、全く違和感ないね。一般の部でもいけそう」


 どうシミュレーションしても可愛い後輩達に勝ち目がない、と諦めた道場生の一人が呟く。


「体格的には男子の一般の部に出てもおかしくないわね。でも剣術は体格が全てじゃないわ」


 そんな弱気な道場生を励ます様に、力強く言い切るエーレ。


「『ちっちゃくても高性能』なエーレが言うと、妙に説得力あるわね」


 別の道場生が例のエーレ主演のCMのキャッチコピーを引用して混ぜっ返すと、皆が笑い、重い空気もやや軽くなった。


 当のエーレも苦笑しつつ、


「でも正直に言って、今の時点でウチの選手達にミノンに対抗する術はない、って感じね。もちろん最後まで勝負を諦めて欲しくはないけれど」


「ああ、それに今回敗北しようとも、そこから得られる情報もあるだろうし」


 昨年のレングストン家の大会でミノンを破って優勝したティーフが言う。


「今年のミノンはあなたから見てどう?」 


「それこそ実際にあの場で立ち会ってみないと分からないが」


 エーレに問われたティーフは難しい顔になって、腕を組み、


「今は、自分が打ち込まれる姿しか想像出来ない。ミノンは一年前に比べて格段に成長してる」


 と答えて、再び場の空気を重くしてしまい、


「あ、でも、その辺も含めてミーティングの時に検討すればいいから。実際に剣を交えたあの子達の証言から、怪獣を倒すヒントが掴めるかもしれないし」


 あわててフォローを入れたものの、間の悪い事にちょうどその時、試合場ではミノンがレングストン家の選手に二本先制して勝利し、準決勝進出を決めた所だった。


 盛り上がる会場の中、そこだけ「あー」と落胆の声が漏れるレングストン家の応援団。


 別に自分の責任ではないのだが、ますますいたたまれなくなったティーフは苦し紛れに隣のエーレに向かって、


「と、ところで、例のアウフヴェルツのストーカーはどうなった? ざっと見た所、どこにも姿が見当たらなかったが」


 無理矢理話題の転換を図り、エーレもその心中を察したのか、


「ま、その方が私にとってはありがたい話よ。試合の最中、ずっとこっちを観察されてたかと思うと背筋が寒くなるわ」


 そう言って、陽気に笑って見せた。


 と、後ろにいた道場生が、身を乗り出してエーレの耳元に口を寄せ、


「あの男の人、来てるわよ。すぐ後ろに」


 と囁く。


 エーレが恐る恐る後ろを振り返ると、レングストン家の応援団から少し離れた場所に例の変態三男坊エーヴィヒが座っており、ばっちり目が合ってしまった。


 爽やかに微笑みかけるエーヴィヒに対し、急速に蒼ざめて急いで前に向き直るエーレ。


「まずいな。今の話を聞かれたか」


 心配そうにティーフが言う。


「ちょ、ちょうどミノンが勝って皆がやかましく騒ぎ立ててた所だから、だ、大丈夫よ」


 後頭部に熱い視線を感じながら、どぎまぎするエーレ。こう書くとまるで恋する乙女の様だが、エーレの中ではストーカーに怯えるサイコホラーのヒロインの方が近い。


 そしてエーレが無駄にどぎまぎしている内に、大会はミノンの優勝で無事幕を閉じた。

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