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美人令嬢達によるTVCM出演の宣伝効果により、その年の剣術全国大会の観客動員数は大幅増が予想され、それを見越して各家とも大会会場の規模を最大限まで引き上げたが、それでもチケットを全ての観戦希望者に行き渡らせる事が出来なくなってしまった。
チケットを取れなかった人達の為に、
「生中継は時間的に無理として、大会終了後に主要な試合を一時間程度にまとめたダイジェスト版を、特別番組として放送してはどうでしょう」
マントノン家の当主シェルシェが、テレビ局側に企画を持ちかけると、スポンサーになってくれそうな企業への根回しを済ませていた事もあって、二つ返事で受け入れられる。
さらにシェルシェは、レングストン家、ララメンテ家の広報担当にも、
「どの大会にも三家の選手が出場するのですから、三つの番組全てで各道場の宣伝をする様なものです」
と呼び掛けた上で協力を仰ぎ、それぞれの大会のダイジェスト番組も制作される様にテレビ局側と交渉し、ここに三家合同による、バラエティー番組的な色物ではない、剣術大会そのものでのテレビ進出を成し遂げてしまう。
「いずれは、この様な個々の大会のダイジェストでなく、流派の枠を超えて統一されたルールの下での大規模な大会を開催して、それを生中継出来る様になれば、と思っています」
道は遠くとも、着々と布石を打ち続けるシェルシェの野望は止まらない。
しかしその後、シェルシェが細心の注意を払いつつ実現を推し進めた統一ルールによる剣術大会が中々開催にこぎつけず、かえってまとまりのない、いい加減な集まりから始まった、統一ルールによる徒手格闘の大会の開催の方が先に実現するのだから、皮肉なものである。
大事を成し遂げるには、ある程度の「いい加減さ」も必要なのかもしれない。




