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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について

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241/638

◆241◆

「マントノン家のミノンもパティも、種類は違えどテレビのレギュラー番組を持つ事で、道場の宣伝効果を上げている様だ。お前もやってみる気はないか?」


 レングストン家の執務室で、当主ムートが娘エーレに言う。


「ありません。私はCM出演だけで精神的に一杯です。出来ればCMからも手を引いて、剣術に専念したい位です」


 真面目な表情ではっきりと断るエーレ。


「主に子供向け番組からオファーが来ているんだが」


「人の話を聞いてください、お父様」


「まあ、聞くだけ聞くがいい。例えばこれはアクションに重点を置いたドラマで、正義の剣士が主人公の勧善懲悪ものだ。毎回悪党との剣の立ち回りが見せ場となる」


「その剣の立ち回りを演じる為に、私が必要だと?」


 剣と聞いて、少し興味が湧いて来たエーレ。


「いや、それは主役悪役共に、もう役者が決まっている」


「では、その剣の演技指導に、私の力を貸せと?」


 さらに興味が湧いて来たエーレ。


「いや、それもプロの殺陣師がいる」


「では、エキストラとして、ちょっと顔を出せと?」


 剣術から離れて少し残念そうな顔になるエーレ。


「いや、そもそもドラマ自体への出演ではない」


「ナレーターですか?」


「近い。ドラマが終わった後、視聴者からのお便りを読むお姉さん役だ」


「お姉さん、ですか」


 普段、世間からちっちゃい子扱いされているエーレは、本物のちっちゃい子達から「お姉さん」と慕われる自分の姿を想像し、少し気持ちが揺らぐ。


「ただしお便りを読む際は、可愛いリスの着ぐるみを着るらしい」


「お断りします。まだ甲冑を着て読む方がマシです」


 気持ちの揺らぎがピタッと静止するエーレ。


 他にもいくつか番組出演のオファーがあったが、どれもこれも剣術と関係がなく、さらに「可愛い動物の着ぐるみを着て」という条件が付加されており、


「今回はご縁がなかったと言う事で」


 もっと激しく拒絶してやりたい、という衝動を抑えつつ言葉を選ぶエーレだった。

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