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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第九章◆◆ 美少女剣士達のメディア戦略について

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231/638

◆231◆

 最初は嫌がっていたものの、かつてのライバルであったシェルシェが短いCMの中で見せた剣技の評判がいい事に、少し対抗意識が芽生えたのか、


「レングストン家の剣術のシーンを何らかの形で入れてくださるのであれば」


 という条件付きで、ようやくCM出演を承諾したエーレ。


「よく言ってくれた。私も若い頃は映画に出演して、レングストン家の宣伝に努めたものだ」

「嘘をつくなっ! あのB級バカホラー映画のどこが宣伝だ!」


 当主のムートが昔を懐かしむ様にしみじみと言った事に、思わず声を荒げてツッコむエーレ。


 どうやら、そのB級バカホラー映画に心底怖がらせられた幼き日のトラウマが蘇ったらしい。


 すぐにエディリアのパソコンメーカー大手のアウフヴェルツとの契約がまとまり、一ヶ月も経たない内にエーレを起用したTVCMが制作され、大々的に放映される事となった。


 暗闇の中、淡く光る稽古着姿のエーレがツインテールを揺らしながら二刀流の型を演ずる様子が、次々と切り替わるアングルで映し出され、最後にアップになり、「ちっちゃくても高性能」、と笑顔で言った後、カメラが引くと実はそこはノートパソコンの画面の中でした、というオチ。


 エーレの二刀流を振るう様子が堂に入っており、それだけでも中々見応えのある映像作品になっていたが、さらに続けて、


「今なら可愛い動物着ぐるみパジャマが当たります!」


 というナレーションと共に、


 犬、猫、ウサギ、アライグマ、ペンギンのいずれかの着ぐるみ式のパジャマを着たエーレが立っている場面に切り替わると、


「うおおおおお、エーレかわえええええ!」

「エーレにこれ着せる事を思い付いた奴、神!」

「この着ぐるみパジャマ姿だけのポスターも、五種類全部作ってくれえええ!」


 その可愛さに脳をやられた大きなお友達も大喜び。


 早速ポスターが作られ、アウフヴェルツ製の商品を買った客への配布キャンペーンが始まると、エディリア全土の家電量販店やパソコンショップの店頭からあっと言う間になくなる程の大好評であった。


「アウフヴェルツから、新CM出演のオファーが来たぞ。今度は着ぐるみパジャマ姿のエーレが踊るところを」

「お断りします!」


 愛娘をさらに売り出そうとする親バカ状態のムートの申し出を、エーレは激しく拒絶する。


 CM本編は気に入ったものの、最後の動物着ぐるみパジャマだけはやめておけばよかった、と後悔するエーレ。


 ちなみにアウフヴェルツ製の商品の売上げは、このエーレのCMにより三倍以上に跳ね上がったという。


 大きいお友達の購買力恐るべし。

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