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大会を終え、会場の外に出たララメンテ家の道場生達を集めて、コルティナが言う。
「はーい、今回私は組み合わせのクジ運にも助けられ、賞金首のティーフ、エーレ、ミノンをコンプリートし、さらに優勝した分も合わせて、計四つの『高級ホテルの極上スイーツ食べ放題』の懸賞を獲得した訳ですがー」
改めて聞くと、とんでもない偉業である。外部から来た三人の強敵を一人で撃破し、大会三年連続優勝を達成したのだから。
かてて加えて、小・中学生の選手達に、データ分析に基づく対策指導を行って実際に成果を上げており、本来なら道場生達からの尊敬と崇拝の対象として、もっと敬意を払われてもいいはずなのだが、
「どうせウチの家族は忙しくて時間が取れないので、これをパーっと使って優勝祝賀会をやりましょー」
わーい、と喜びの声を上げる道場生達がコルティナに対して感じているのは、尊敬と崇拝というより親しみや気安さの方が大きかった。マントノン家のシェルシェとは逆である。
道場生達は時々ふと、コルティナについて、
「この人、美少女だし、お嬢様だし、天才剣士だし、ハイスペックにも程があって、平凡な庶民の自分なんかにとっては、本来雲の上の人なんだよね」
と、不思議な気分になる事もあるが、いざ面と向かうと、そのふわふわした言動に翻弄されてしまい、いつしかスペックの差も忘れ、声を荒げてツッコミを入れまくっている自分に気付くのである。
祝賀会会場となるホテルへ向かう途中、
「やっぱり、それもコルティナの計算の内なのかな」
「ツッコミを入れている様でいて、実はツッコミを入れさせられていたりして」
「だとしたら、ちょっとしたホラーかもね」
そんな事を冗談半分に言い合う道場生達。
「でも、優勝インタビューのアレはない」
「うん、今回もひどかった」
「ツッコむなって方が無理」
「え、何々、何の話ー?」
そこへ、呼んでないのにふわふわとやって来るコルティナ。
「簡単に言うと、『完璧な人はいない』って話」
道場生の一人が苦笑混じりに答える。
「ははは、そんなの当たり前だよー」
そう言ってふわふわと笑うコルティナを見て、道場生達もつい笑ってしまうのだった。




