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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について

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221/638

◆221◆

 これまでの二大会での三令嬢対決は、「ミノン対エーレ」、「ミノン対コルティナ」がそれぞれ二試合ずつで、その全てでミノンが勝利している。


 しかし、それだけミノンが圧勝していても、


「この三人の令嬢の中で誰が一番強いと思う?」


 と、それらの試合を見た人に問うならば、


「ミノンだろ。でかいし、豪快な反面、技のキレもある」

「エーレでしょ。ちっちゃいのに落ち着いてて頑張り屋さん」

「コルティナかな。とにかく分析眼が神懸かってる」


 などと、誰か一人に偏る事なく、三人の名前がほぼ同じ割合で返って来る事は想像に難くない。


 勝敗は単に結果であって、それが絶対的な力量の差を決定する程単純ではなく、特にコルティナに関しては、


「自家の大会でのコルティナはやたらと強い」


 との認識が行き渡っており、「どの大会のコルティナか」、という点も考慮する必要がある。


 そして迎えたララメンテ家の大会の中学生の部の決勝戦、試合前の観客達は、


「どっちが勝つかさっぱり分からん。先の二大会のアウェイ戦じゃ、確かにミノンが勝ってるが、ここはコルティナが一番強くなるホームの戦いだ」

「エーレを倒した勢いもあるしな。もっともコルティナに『勢い』って似合わないにも程があるが」

「『勢い』と言えばやっぱりミノンだろ。だが、コルティナの『ふわふわ』は『勢い』を受け流しかねない」


 「勢い」と「ふわふわ」のどちらが勝つかについての予想が飛び交い、


「『柔よく剛を制す』でコルティナが勝つんじゃねえか。闘牛士が闘牛を大きな布でひらりひらりとかわすイメージで」

「『剛よく柔を断つ』とも言うぜ。それに闘牛士だって、闘牛に突き殺される事だってあらあ」

「どちらが勝つかはともかく、両者のサイズ比較的には的を射た例えだな」


 闘牛の話や、


「やっぱ旅人の服を脱がせられるのは、『北風』じゃなくて『太陽』だろ」

「その前に帽子を脱がせる勝負をやったら、『北風』が『太陽』に勝ったって説もあるぜ」

「そもそも、野郎の服を脱がせて楽しいのかって話だが。若い女の服なら話は別だが」


 昔懐かしい童話まで引っ張り出して来る始末。


 そんな試合前の盛り上がりを、コルティナは、


「今大会も大成功だねー。どっちが勝っても、お客さんの満足度に変わりはなさそうだしー」


 呑気に眺めており、仲間達から、


「いや、勝ちに行こうよ」


 と、窘められ、一方ミノンは、


「本土を守るコルティナとはどれほどの強さなのか、いざ勝負!」


 と、本土上陸前の巨大怪獣っぽく吼えていた。

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