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これまでの二大会での三令嬢対決は、「ミノン対エーレ」、「ミノン対コルティナ」がそれぞれ二試合ずつで、その全てでミノンが勝利している。
しかし、それだけミノンが圧勝していても、
「この三人の令嬢の中で誰が一番強いと思う?」
と、それらの試合を見た人に問うならば、
「ミノンだろ。でかいし、豪快な反面、技のキレもある」
「エーレでしょ。ちっちゃいのに落ち着いてて頑張り屋さん」
「コルティナかな。とにかく分析眼が神懸かってる」
などと、誰か一人に偏る事なく、三人の名前がほぼ同じ割合で返って来る事は想像に難くない。
勝敗は単に結果であって、それが絶対的な力量の差を決定する程単純ではなく、特にコルティナに関しては、
「自家の大会でのコルティナはやたらと強い」
との認識が行き渡っており、「どの大会のコルティナか」、という点も考慮する必要がある。
そして迎えたララメンテ家の大会の中学生の部の決勝戦、試合前の観客達は、
「どっちが勝つかさっぱり分からん。先の二大会のアウェイ戦じゃ、確かにミノンが勝ってるが、ここはコルティナが一番強くなるホームの戦いだ」
「エーレを倒した勢いもあるしな。もっともコルティナに『勢い』って似合わないにも程があるが」
「『勢い』と言えばやっぱりミノンだろ。だが、コルティナの『ふわふわ』は『勢い』を受け流しかねない」
「勢い」と「ふわふわ」のどちらが勝つかについての予想が飛び交い、
「『柔よく剛を制す』でコルティナが勝つんじゃねえか。闘牛士が闘牛を大きな布でひらりひらりとかわすイメージで」
「『剛よく柔を断つ』とも言うぜ。それに闘牛士だって、闘牛に突き殺される事だってあらあ」
「どちらが勝つかはともかく、両者のサイズ比較的には的を射た例えだな」
闘牛の話や、
「やっぱ旅人の服を脱がせられるのは、『北風』じゃなくて『太陽』だろ」
「その前に帽子を脱がせる勝負をやったら、『北風』が『太陽』に勝ったって説もあるぜ」
「そもそも、野郎の服を脱がせて楽しいのかって話だが。若い女の服なら話は別だが」
昔懐かしい童話まで引っ張り出して来る始末。
そんな試合前の盛り上がりを、コルティナは、
「今大会も大成功だねー。どっちが勝っても、お客さんの満足度に変わりはなさそうだしー」
呑気に眺めており、仲間達から、
「いや、勝ちに行こうよ」
と、窘められ、一方ミノンは、
「本土を守るコルティナとはどれほどの強さなのか、いざ勝負!」
と、本土上陸前の巨大怪獣っぽく吼えていた。




