◆216◆
まず序盤戦は、大方の予想通り、ララメンテ家の選手達による外部選手達の大掃討から始まった。
その試合内容はほとんど瞬殺に近く、相手の挙動を予め読んでいたとしか思えない見事なカウンター技が決まる度に、観客達はどよめきつつ喝采を送る。
「ここまで来ると魔術だな。対戦相手の一人一人について、全部対応策を用意してるんだろうか」
「用意だけでもかなり手間がかかるし、その対応策を完全に自分のモノにするとなると、稽古の量も半端ねえんだろうな」
「データ分析主義って言うと、弱点を突く事に特化したその場しのぎの手段に聞こえるが、普通に素で強いんじゃないか? 小学生の部で優勝したパティも、インタビューでそんな事言ってた気がする」
しかし、小学生の部ではパティ以外ほぼ全ての外敵を討ち取ったのに対し、この中学生の部では、ミノン、エーレという強豪は言うに及ばず、カウンター技を逆にタイミングを狂わせて防ぎ、相手が戸惑った隙を狙って勝ち、生き残った選手も案外多い。
「こうして見ると、ララメンテ家の選手が、本当に一発勝負のカウンターに掛けてるってのがよく分かるな」
「決まれば魔術だが、外すとガタガタか。まあ、決められるだけでもすごいと思うが」
「今回、ララメンテ家の選手達は苦戦気味だな。いずれにせよ三大令嬢は難なく勝ち残るだろうが」
そんな観客達の感想を裏付ける様に、ミノン、エーレ、コルティナは着実に勝ち進んで行き、やがてコルティナは、先のレングストン家の大会で優勝したティーフとの対決を迎える事となる。
「こりゃ、ティーフは勝てねえな。相手が悪すぎる」
「いや、ティーフもこの前の優勝で勢い付いてるから、ひょっとすると勝つ可能性も」
「ないない。勢い付いてる敵は、却ってふわふわお嬢様の餌食だろ。それに、大会優勝者ともなれば念入りに分析されてるはずだ」
観客達はほぼティーフの敗北を確信していたが、それだけに、
「コルティナがこの一途な強者ティーフをどう討ち取るか」
に興味が集まり、観戦していたパティとシェルシェも、
「野生動物のドキュメンタリー番組で、一風変わった狩りをする動物の貴重な映像記録を見ている気分です」
「ふふふ、時には狩られる側が狩る側を倒す事もありますよ」
双眼鏡を手に、その狩りの決定的な瞬間を待ち構えた。