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「このモンスターは物理攻撃は効かないが氷系の魔法に弱い」
「そこのダンジョンの中ボスは強力な全体攻撃を仕掛けた後はしばらく攻撃してこない」
「ラスボスを倒す時は、まず左右の触手を始末してから」
などという攻略記事に頼ってRPGをスイスイ進めるヌルゲーマーの如く、ふわふわ分析魔コルティナの授けた対策に従って、外部から来た強敵をバタバタと倒して行くララメンテ家の選手達であったが、ことパティに対しては計算が狂い、
「何これ、勝手が違う」
「攻略が全然役に立たない」
「いつの間にかパラメータが変更されてる」
まさに、突然のバージョンアップで難易度が上がったおかげで先に進めず阿鼻叫喚状態。
攻略記事が役に立たない以上ヒラで戦うしかないのだが、レベルに三桁程以上の差があると言ってもいい程の強敵パティが相手では、
「こっちの一ターンの内に、相手が五ターン位攻撃して来るんですが」
「HPが圧倒的に足りないし、MPは役に立たない」
「無理ゲーにも程がある」
全く打つ手がなく、パティと当たったパーティーメンバーは一人、また一人と消えて行く。いや、トーナメント方式だから一人ずつ消えて行くのは当たり前なのだが。
「コントローラー投げたくなるわ、これは」
「瞬殺に次ぐ瞬殺だからね。あの子達トラウマにならなきゃいいけど」
「流石、あのシェルシェとミノンの妹にしてエフォールの姪、と言うべきかしらん」
観客席で応援していたララメンテ家の道場生達も、パティと後輩達との圧倒的な才能と技量の差に、半ば諦めムードになっている。
「この応援用の『油断大敵』って横断幕にしたって、『油断してもしなくても勝てない相手』じゃ意味ないよね」
道場生の一人がそう言ってため息をつくと、
「うふふ、最後まで勝負は分からないよー。どんなに強い人でも、うっかり油断する事はあるからねー」
双眼鏡から目を離したコルティナがふわふわとした口調で答えた。
「『油断大敵』って相手の側の事だったの?」
「両方だよー。完璧な人間なんていないし、大切なのはー」
コルティナはふわふわと微笑みつつ、
「どんなに相手が強くても最後まで勝負を捨てない事、だねー」
「あ、コルティナが何かいい事言った!」
「例えるなら、スーパーで半額シールが貼られるギリギリまで待つ心境かなー?」
「前言撤回。って言うか、いいとこのお嬢様がそんな事やってたんかい」
色々言動に謎の多いコルティナだった。




