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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について

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206/638

◆206◆

 試合が始まるや、ふわふわ分析魔コルティナの策が見事にハマり、外部からの参加選手達は序盤から死屍累々の惨状を呈する事となる。


 まず、先のレングストン家の大会優勝者ナーデル・シュヌーアが、ララメンテ家のほぼ無名の選手ベルドラ・カルネに二本先制されてまさかの一回戦敗退。


 パティを決勝で負かす程の実力者が、いきなり消えた事に観客達が驚く間もなく、マントノン家とレングストン家の選手達は次々と姿を消して行き、二回戦に勝ち進めたのは、ララメンテ家の選手と当たらなかった数人と、唯一ララメンテ家の選手を瞬殺したパティだけとなる。


「すげえというか、えげつねえなララメンテ家。前の二大会だと全然パッとしなかったのに」

「レングストン家の大会で優勝したナーデルは絶対狙われてたな。二本とも、打って出るタイミングに合わせてカウンターを入れられてたし」

「だが、一番狙われてるはずのパティは全然平気だったな。やっぱり、圧倒的な実力の差はどんなに分析して対策しても、簡単にはひっくり返せないものなのかね」


 観客達がデータ分析主義の限界について論じ始めると、


「確かにあの変態、もといパティは強いけれど、データ分析の効果がなかった訳じゃないわよ」


 同じく観戦していたレングストン家のエーレが、後輩選手達の惨状を目の当たりにして、苦い顔で異を唱えた。


「しかし、現にパティの対戦相手は、なす術もなく一本取られているんだが」


 隣で一緒に観戦していたティーフが反論する。


「そうじゃなくて、あの変態、もといパティは自分のデータそのものを書き換えて来たのよ。今回一刀流にしたのは、元に戻したんじゃなくて、別の一刀流で来てるの」


「そんな事が出来るのか?」


「普通は無理。慣れた戦い方は無意識の内に身に染み込んでしまっているから、リズムとか癖とか表情とか直すのは至難の業よ。でも、あの変態、もといパティはそれが出来る」


「データ分析が効果なかった訳じゃなくて、そもそもデータが違うって事か」


「言い方を変えれば、あの変態、もといパティは、コルティナの対策の裏をかいて、さらに対策して返している感じ」


「言うは易いが行うのはすごく難しいぞ、それ。どんな稽古をすればそんな事が出来るのか見当もつかない」


「まさしく変態ね」


 世間からは「大道芸人」とあだ名されるパティだったが、先日の痴漢の一件以来、被害に遭ったエーレは陰で「変態」と呼んでいる。

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