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他家の二大会は捨ててデータ蓄積に徹し、それを元にふわふわ分析魔ことコルティナが対策を立て、自家の大会で外部からの挑戦者を殲滅する。
もはやすっかりお家芸になった感のあるララメンテ家の戦法だが、これについてララメンテ家の選手達は、
「いや、私達、そこまであからさまに試合を捨ててない」
「コルティナさんも、有力選手を倒した人や優勝した人には、例の『高級ホテルの極上スイーツ食べ放題』を出して発奮させようとしてる位だし」
「ただ、『負けた試合でも、上手く使えば次の勝利に繋げられるって事は自覚しておいてねー』とは、よく言われる」
決して二大会で手を抜いている訳ではないのである。
最初のマントノン家ではデータが無く、次のレングストン家ではデータ分析が不十分、最後のララメンテ家に至ってようやく対策が完成するので、
「ホップ、ステップ、ジャンプの三段跳びみたいなものかな」
「ロー、セカンド、一つすっ飛ばしてトップのギアチェンジみたいなものかも」
「……もしかして、ウチの流派ってデフォでは弱い? 無課金ユーザー状態で」
しばし遠い目で無言になるララメンテ家の選手達。
「やっぱ、ウチ業界第三位だもんね……データ分析なかったら、ボロボロかも」
「昔は外部参加が珍しかったから、平和だったね。内輪だけで試合してればよかったし」
「今はマントノン家やレングストン家の実力者がガンガンやって来るし、こっちからも向こうに出向いて行かないとバランス悪いしで、メンツを保つのも結構大変だよね」
だんだん自虐的になって来た。
「ほ、ほら、でも、ウチは皆和気あいあいとしてるじゃない」
「ほのぼの加減だったら、マントノン家もレングストン家もメじゃないわ」
「稽古の一環で、ホラー映画や怪獣映画の観賞会やったり、勝っても負けても皆でスイーツ食べに行ったり」
そしてV字回復。
「それに何たって、ふわふわお嬢様のコルティナさんがいる!」
「だよね、コルティナさんがいる限り、ララメンテ家が弱いだなんて言わせない!」
「コルティナさんが指導してくれるおかげで、強い人達にも圧勝出来るんだし!」
ふわふわお嬢様の株が急上昇。
改めて選手一同、観客席から後輩達の活躍を応援しているコルティナの方に目を向けると、ふわふわお嬢様は他の道場生達に手伝わせて、「油断大敵」と大きく書かれた横断幕を掲げていた。笑顔で。
「……でも、ちょっと変な人かも」
「微妙に何を考えて生きてるのか分からない、って言うか」
「言いたい事は何となく分かるけど、アレは試合の応援と言うより工事現場の注意書きみたい」
そんなふわふわお嬢様に授けられた対策を胸に、ララメンテ家の選手達は試合に臨む。




