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見事三年越しの雪辱を果たしたティーフは、エディリア剣術界の御三家の中で最も熱血スポ根気質が高く、この手の話が大好きなレングストン家の道場生達から一躍英雄として持て囃され、本人の意思とは無関係に「感動をありがとう」的な扱いを受けていたが、ティーフ本人は驕る事なく、
「本当に紙一重の勝負だった。我ながらあの強敵を相手によく勝てたと思う。でも次のララメンテ家の大会で勝てるかどうかは分からない」
と、謙虚に気を引き締めていた。
「そうね。それに、自陣を防衛する時のララメンテ家の道場生は異様に強いから、その意味でも油断は出来ないわ」
稽古場の隅で防護マスクを脱いで休憩していたエーレが、隣に座るティーフに言う。
「それに今回優勝した事で、自分は間違いなくコルティナに目を付けられてると思う」
「優勝するまでもなくマークされてるわよ。あの子はふわふわしている様でいて抜け目ないから」
「もう既にララメンテ家の選手達は、エーレや私の弱点の分析を終了して、そこを狙う事に特化した稽古に励んでいるんだろうな」
「自分の分析結果を一度見てみたいわね。自分で思っている以上に、自分がどんな剣士か分かるんじゃないかしら」
二人で軽く笑い合った後、ティーフは、
「私は全力を尽くすつもりだけれど、もし序盤で敗退したら許して欲しい。レングストン家の名誉を傷付けてしまう事になるかもしれないが」
と、少し弱気になった所を、
「変なプレッシャーを感じる必要はないわ。優勝しようがしまいが、大切なのは全力で戦う事だけよ」
エーレに活を入れられていた。
一方、ふわふわしている様で抜け目ない子ことコルティナは、ララメンテ家の本部道場の大会議室に大会出場予定選手達を集め、ホワイトボードに貼った五枚の顔写真を指し棒で示しながら、
「次の大会の賞金首はこの人達。小学生の部はパティとナーデル、中学生の部はエーレとミノンとティーフ。この内の誰かを倒せば、高級ホテルの極上スイーツ食べ放題にご招待だよー」
相変わらず皆をスイーツで釣っていた。




