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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について
200/632

◆200◆

 延長戦開始直後、ほぼ同時に前方に進み出たミノンとティーフは、試合場の中央でのっけから激しく剣の打ち合いを始め、その派手な戦い振りに観客達もやんやと喝采を送った。


 近い距離での攻防の末、鍔迫り合いになった二人は互いの剣を滑らせる様に、一歩、また一歩とゆっくり段階的に離れ、ようやく剣先と剣先が離れたと思った次の瞬間には、再び互いに前に出て打ち合い、そのまま鍔迫り合いへと移行する。


 その後も二人は鍔迫り合いと激しい打ち合いとを頻繁に繰り返すが、特に鍔迫り合いの時間が異様に長く、


「まるで磁石でくっついてるみたいだな、あの二人」


 と観客達の一部から言われるまでになる。


 確かにこの一連の動作は、磁力に逆らって一生懸命離れようとしてはくっつき、離れようとしてはくっつきしている姿にも見えない事もない。


 中々磁力に抗えないまま、試合時間が五分を過ぎた頃、互いの頭上を同時に打ったのをきっかけにして、正面を相手に向けたまま二人は離れ、十分な間合いを取って対峙し、ミノンは上段に剣を大きく振りかぶり、ティーフは中段に構えた剣をせわしなく上下左右に振りながら、しばし睨み合いとなる。


 しかしそれも長い時間ではなく、S極とN極を向かい合わせてから少し離して置いた磁石が、手を離すと引き合ってすぐカチッと音を立てて衝突する様に、この二人も同時に引かれ合う様に相手の方へ飛び込んで、ミノンはティーフの右手を、ティーフはミノンの頭上を同時に打つ。これも相打ちと見なされて試合は続行。


 鍔迫り合いからすぐに離れ、ミノンが剣を上段に振りかぶったそのタイミングに合わせて、ティーフが姿勢を低くして体を回転させつつ、相手の左胴を鋭く打ち、すぐに後ずさりして距離を取り、剣を構え直す。


 審判はこれを一本と認め、試合終了。


 ティーフは三年前に受けた屈辱を、自らの手で見事晴らしたのである。


 ミノンの二冠達成の瞬間に立ち会えなかった観客達も不満な様子はなく、このティーフの優勝を割れんばかりの拍手で祝福し、


「よくやったぞ、ティーフ!」

「三年越しの執念が実ったな!」

「シェルシェが『殺人鬼』なら、ティーフは『復讐鬼』だ!」


 おそらく本人が望まないであろう物騒な称号を付けられそうな流れが出来つつある中、当のティーフは夢見心地でまだ実感がよく湧いていない。


 地味ではあるが、自分が紛れもなく一つの偉業を達成した事を。

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