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エーレ、コルティナの強敵令嬢二人を破り、二冠達成までの秒読み態勢に入った巨大怪獣ミノン。
観客のほとんどは、「コルティナと戦った準決勝戦こそが事実上の決勝戦」であったと確信しており、決勝戦の対戦相手となったレングストン家の選手の名前を聞いて、
「ティーフ・エルンストって、何か聞き覚えがある名前の様な気がするんだが」
「思い出した。三年前、小学生の部の大会の決勝で、シェルシェに負けた子だ」
「今回もミノンには勝てねえだろ。歴史は繰り返すんだな」
その不思議な因縁に多少思う所はあったものの、それでどうという事もなく、やはりミノンの大会優勝を信じて疑わない。
三年前、小学生だった時は優勝候補の一人だったティーフも、中学生になってからはあまりパッとせず、同じ学年のエーレが華々しく活躍する影で、地味なその他大勢の選手達の中に埋もれて行き、再び頭角を現す様になったのはここ最近になってからである。
このティーフ、背は高く、体つきもがっしりしており、短髪でボーイッシュな顔立ちという、ミノンと似た所がないでもなかったが、いかんせん、ミノンの方がいずれのスペックも高く、そう言った意味でも丁度いい引き立て役になっていた。
「三年前の試合の再現だねー。あの時のティーフはプレッシャーでガチガチだったけど、大丈夫かなー」
ミノンに準決勝で敗れたばかりのコルティナが、それより先に敗れていたエーレの元にやって来て言う。
「三年前、シェルシェに勝ち逃げされたままだったティーフが、こうして同じシチュエーションで妹のミノンと戦えるのは、願ってもない機会よ」
エーレはそう言って、にやりと笑い、
「これに勝てば、ティーフのトラウマも克服されるわ」
ただし負けたら、ティーフのトラウマが増える可能性もなきにしもあらず。