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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について
195/635

◆195◆

 一本先制されても全く動揺の色を見せず、試合が再開されるや、逆に活き活きとした様子で剣を上段に構えるミノン。


 これに対し、左の短剣を前に突き出し、右の長剣を振りかぶって、巨大怪獣の突撃を待ち構えるエーレ。


 しばらくの間、両者ほとんど動かず、試合は膠着状態が続く。


 このまま時間切れを迎えればエーレの判定勝ちが決まるにも拘わらず、ミノンは中々動こうとしない。


 むしろ、観客の方が時間切れを心配してハラハラしていた。


「大丈夫かミノン。さっきすっ転んだ時に、打ち所が悪かったんじゃねえだろうな」

「いや、時間ギリギリで一本取るのはミノンの十八番だぜ。何か狙ってるのかもしれん」

「エーレの方も全然攻めて来ないな。カウンター狙いに徹するのは、こないだの試合から得た教訓か? よく分からんが」


 様々な憶測が飛び交う中、さながら冷凍弾を体に撃ち込まれて氷漬けにされた怪獣の如く動かなかったミノンが、何の前触れもなしにスッと前に出て、片手を伸ばし素早くエーレの頭部を打つ。


 エーレはこの不意の一撃に反応しきれず、振りかぶった長剣を傾けて防ごうとするも時既に遅く、ほぼ棒立ちのまま一本を取られてしまった。


 いつもの豪快な巨大怪獣ミノンらしからぬ、相手の隙を突いた静かな攻撃に、こんな戦い方も出来るのか、と観客は妙に感心させられる。


 その後すぐに時間切れとなり、延長戦に突入すると、エーレは態度を一変させてミノンに猛攻を仕掛け、左右の剣を複雑に操って、矢継ぎ早な連打を浴びせたが、ミノンはこれを後退しながら一つ一つ防ぎ切り、その合間を縫って放った一打をエーレの左手に見事に決め、これが一本となって試合終了。


 突撃ばかりが能ではない事を証明し、強敵エーレを下したミノンだったが、


「勝ったけど、何か物足りねえな」


 派手な突撃や打ち合いをミノンとエーレの令嬢対決に期待していた観客は、この地味な決着に、うっかり怪獣娯楽映画と社会派ドキュメンタリー映画を間違えてレンタルしてしまった様ながっかり感を覚えていた。


 社会派ドキュメンタリー映画も決して面白くない訳ではないが、小難しい事を考えず頭を空っぽにして楽しみたい時には超不向きである。

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